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金融政策の効果逓減と不確実性に関する実証分析

経済学科 准教授 得田雅章
  1. 金融政策の効果減衰に関する実証分析(2009.07 滋賀大学 リスク研究センターCRR WORKING PAPER SERIESNo.J-7、pp.1-23)[得田A]
  2. 金融政策の実体経済への影響 (2010.03 文眞堂 『平成不況の原因を探る』、pp.201-225)[得田B]
 両論文は金融政策当局による政策効果に減衰が確認されるのかを実証分析により定量化したものである。対象は日本のマクロ経済であり、期間はゼロ金利制約や量的緩和政策を含んだ1986年以降2009年である。実証分析に先立ち、量的緩和政策期に採られた手段と効果について、およびマクロ経済モデルについて若干の整理を行った。そのうえで、金融政策効果の実体経済への影響度がどう変化していったのかを、構造VAR(Vector AutoRegressive)モデルを用いることで考察した。実証分析によると、2000年代初頭以降、金融緩和政策の実体経済へ及ぼす効果が減衰していく過程が確認された。
 金融政策効果減衰の原因としては、市中銀行を中心とする金融仲介システムが有効に機能しなかったことが考えられる。先行研究の多くが主張するように、また本論での5変数VARモデルによるインパルス反応で確認されたように、確かに時間軸効果により日本銀行は長期金利を押し下げることに成功したといえよう。しかし、不良債権問題や金融不安定性増大により毀損してしまった金融システムが、低金利環境構築に続く、企業の設備投資や家計の消費を力強く後押しすることはなかった。金融政策(代理)変数から実体経済へ向かう連結節としての金融システムはその機能を十分果たしている証拠は両論文の実証モデルからは確認できなかった。
  1. Consideration of Relation between Characteristic and Price of Land by Hedonic Approach: The Residential Quarter in Shiga Prefecture as a Case Study (2009.11 滋賀大学 Working Paper Series, No.120, Faculty of Economics, Shiga University, pp.1-25.)[得田C]
  2. ヘドニック・アプローチによる滋賀県住宅地の地価形成要因分析(2009.12 滋賀大学 滋賀大学彦根論叢No.381、pp.183-204)[得田D]
 両論文では、滋賀県における住宅地地価の空間的分布を観察することを通じて、地価に有意な影響を与える不動産特性がヘドニック・アプローチによってどの程度捕捉され得るのか、またその場合に具体的にどの要因が価格差を決定づけるうえで重要となるのかを実証分析してきた。
 彦根論叢では地価公示ならびに地価調査のデータセットを用い、それぞれ線形、対数線形を含めた5つのモデルを用意し、探索的に推計を行ってきた。どの推計モデルもフィットは良好で、価格を形成する要因としては、地積、最寄り駅までの距離、大津駅までの距離、前面道路幅、ガス敷設ダミー、琵琶湖線ダミーが重要であり、それぞれのモデルで定量化がなされた。
 Working Paper Seriesでは鑑定データに加え市場で取引されたデータを用い、同様の推計を行った。量的変数およびダミー変数の多くで、同様の結果が示された一方、取引データのみで有効な要因も判明した。
 理論的に整合性のある符号条件が得られ、さらに定量化がなされたことは、市場価格(厳密には鑑定価格)を不動産鑑定士のような専門家ならずとも知り得るという意味で意義深いといえよう。

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