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産業革命期における企業発展と地域社会の総合的研究

経済学科 教授 筒井正夫
 本研究は、まず膨大に残る富士紡績小山工場史料の撮影を行うことが前提となる。そこで、年間6回にわたる資料調査を実施して、史料の撮影を敢行した。その結果、明治期、大正期、昭和戦前期の史料の撮影を終了することができた。
 撮影後は、簿冊ごとに細かい史料文書の目録を作成した。さらに重要史料の印刷を行なった。史料内容は、富士紡工場の進出経緯を示す文書、工場別営業報告書、官公庁との交渉書類、工場用地買収関連文書、工場建物の見取り図、動力水車関係書類、生産成績統計、紡績機械関係文書、原料調達関係文書、販売関係文書、税務関係書類、職員名簿、工場内緒規則文書、福利厚生関係文書、土木・交通関係文書、衛生・病院関係文書、消防関係文書、災害復旧関係文書等に及んだ。
 これらの工場内部資料は、他に類を見ない貴重な一次資料である。
 撮影した史料を、目録化し、そのうち重要な史料の印刷を行ない、分析作業に取り掛かった。今回は。明治期の創業期から日清・日露戦後期に焦点を絞り、  次の4つのテーマについて分析を進めた。
 第一に、富士紡の企業経営と工場生産の展開過程を、統計的に解明し実証的に明らかにすることである。そのために、株主の構成、綿糸紡績の生産統計、絹糸紡績の生産統計、綿布生産の統計、主要営業勘定の推移と利益率の分析、生産費内訳の推移、従業員の出身地および工賃の傾向、等統計的に整理し表出する作業を行なった。
 第二に、労使関係ならびに労務管理の実態についての解明である。工場内部の服務規則や職工心得、寄宿舎規則等初出の貴重な史料の翻刻を行ない、その労務管理、労使関係史上の特徴についての分析を進めた。
 第三に、工場と地域社会との間に起こる様々な問題について、工場内部の史料から明らかにすることである。そのために土木、水利、購買、労働者管理、税務、教育、衛生・病院、風紀、水害・火災、寄宿舎と社宅等の課題別に史料を整理し、その特徴を把握した。
 第四に、主要株主や発起人となった企業家については、それらの人物の伝記や関連史料を収集して、いつどのようにして富士紡への投資を行なうネットワークを形成したのか、その人的結合の特色と理念についても研究を進めた。また主要経営者の経営手法についても経営者史的アプローチによって、比較検討を行なった。
 これらの研究結果は、順次「産業革命期における富士紡績会社の経営構造」として『彦根論叢』上に連載して発表し、それを取りまとめて専門研究書として発刊する予定である。まずその第1弾として「産業革命期における富士紡績会社の経営構造(?)―創業への道のり―」が381号に掲載される予定である。

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