Non-GAAP指標の開示とコーポレート・ガバナンスとの関係
Non-GAAP指標は任意開示情報であるため,開示実態の詳細の把握とともに,研究実施に必要なデータ・ベースの作成が必要である。これまでの個人研究プロジェクトを通じて,国内企業の開示実態に関するデータ・ベースはその一部を構築しているが,コーポレート・ガバナンスに関する論点での同指標の利用といった実務は,より近年において実施されるようになってきたため,より直近のデータを収集する必要がある。
そこで,有価証券報告書等からNon-GAAP指標に関するデータを手作業で収集し,データ・ベースのアップデートを進めるとともに,ガバナンス関連の開示情報については市販のデータ・ベースから入手した。
まず,アメリカ等の海外企業を対象とした先行研究では,Non-GAAP指標が役員報酬の決定要素に組み込まれる傾向にあることが明らかにされていることから,国内企業においても同様の実態が見られるのかを確認した。
調査の結果,特に2016〜2018年度以降,国内では同指標がガバナンス関連情報として開示される傾向にあることを明らかにした。また,こうした傾向は,コーポレートガバナンス・コードの改訂により役員報酬の決定方法に関する開示が増加したことが背景にあることを示した。
また,多くの企業においてNon-GAAP指標の方がGAAP指標よりも業績が良くなる傾向にあることから,両者の差異の大きさと役員報酬の規模との間に関連性があることを確認した。
他にも,財務制限条項といった債務関係の契約においてもNon-GAAP指標の利用が確認され,近年その利用が増加傾向にあることが明らかとなった。財務制限条項における同指標の利用の詳細を把握するためには,債務契約に関する詳細な情報を別途入手する必要があるため,今後も調査を継続する予定である。
こうしたNon-GAAP指標の開示とコーポレート・ガバナンスとの関係についての国内の実態と国内外を対象とした先行研究における議論をとりまとめ,2025年度中に論文として公表する予定である。同様の論点を取り上げた研究は国際的にも進展しておらず,今後その研究成果の蓄積が進んでいくことが予想される。今後の科研費申請も含め他の研究助成を利用し引き続き関連プロジェクトを継続していく予定である。
【結果発表】
1. 結果発表の時期 2025年4月〜2026年3月
2. 結果発表の方法 2025年度中にワーキング・ペーパー,学術雑誌等において公表する予定