沖縄のハンセン病療養所をめぐる文化研究
本事業は、寄附金霊交会と科学研究費助成事業基盤研究(B)一般(分担)とによる事業と連動して実施した。
本事業の目的は、ハンセン病者がその「礎」を築いたといわれる沖縄のハンセン病療養所国頭愛楽園(現国立療養所沖縄愛楽園)の来歴をたどり、その実証をふまえた園史を執筆することだった。
まず、本事業の調査先をあげると、国立国会図書館、国立ハンセン病資料館図書室、リデル、ライト両女史記念館がある。
上記箇所の調査をとおして、沖縄のハンセン病療養所の「礎」を築いたといわれるハンセン病者の音声記録が、リデル、ライト両女史記念館の館長の手許にあったとわかった。この音声記録を主とした展示が企画され、その企画準備に協力することとなった(2024年4月20日展示開始予定)。
本事業においては、①上記音声記録を同記録に付随する史料と、同記録の録音者とおもわれるものの日誌などと、関係者からの聞き取りをふまえて、その音声の主体を確定するとともに、その主体の動向を明らかにすること、②その主体にさきだつ沖縄における布教と「救癩」の活動を、同地の地方新聞報道に探ること、③ついで同園の創設当初のようすを明らかにすること、を実施した。
上記の「研究概要、実施方法及び経過等」をふまえた研究成果の概要は、第1に、沖縄のハンセン病療養所の「礎」を築いたといわれるハンセン病者の、現存する唯一のものとおもわれる音声記録の展示にかかわったこと、第2に、同記録のいわば史料解題を執筆すること(2024年4月発表予定)、第3に、20世紀初頭から1938年の沖縄におけるハンセン病療養所の設置にいたるまでのハンセン病者のようすを、おもに新聞報道から跡づけること、をあげられる。
いずれも未解明の歴史の一斑を明らかにし得たといえる。