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フロイトの局所論(意識・前意識・無意識)からエス・自我・超自我の構造論への展開の解明

社会システム学科  助教授 山下一道
 フロイトの局所論(意識・前意識・無意識)からエス・自我・超自我の構造論への展開を(1)研究論文集(“Sigmund Freud. Critical Assessments”)から先行研究の現状と問題点を明らかにし(2)フロイト全集の第8?13巻に収められた1912年から1923年の諸論文の精読を通じて、解明することが研究の概要であった。しかしながら、この後援基金による助成が決定したのが昨年の11月であり、(1)の研究論文集が届いたのが12月であったので、実施方法を変更し、局所論(意識・前意識・無意識)の理論的解明に焦点を絞り、それに関連する原典の諸論文の精読と問題点の整理に集中した。 (1) Einige Bemerkungen ueber den Begriff des Unbewussten in der Psychoanalyse (「精神分析における無意識の概念に関する2、3の覚書」1912)”、 (2) “Erinnern,Wiederholen und Durcharbeiten(「想起、反復、徹底的検討」1914))”、 (3)“Verdraengung(「抑圧」1915)”、 (4)“Das Unbewusste(「無意識」1915)”の4論文から、以下のことが明らかになった。
 (1)おいて、フロイトは「後催眠性暗示」の実験を通して得られた通時的な現象理解(=記述的理解)を、「意識されないで、活動している」無意識の存在とそれとの関連で意識面で引き起こされる現象として、意識・前意識・無意識からなる力学的構造において明らかにした。そして、この「意識されないで、活動している」無意識が、緊張の消耗・防衛の感情にも拘わらず想起され意識に齎される場合を「前意識」、防衛の感情によって意識に齎されない場合を「無意識」として区別し、更に、この「無意識」は「夢」というかたちをとって意識面に浮かび上がるという「夢分析」の理論を提起した。すなわち、「夢形成」とは、ある無意識の観念が「防衛」という昼間の精神の営みによって呼び覚まされて、催眠を引き起こし、夜間になって「夢を見る本人の精神生活のなかに幼児から常に存在しているが、普通は抑圧されていてその意識的存在から閉め出されている無意識的諸願望の一つと結びつくことに成功」し、昼間の行動の残滓(=抑圧されて意識面に浮かび上がらなかったもの)が再び活動を続けるようになり「夢」という形をとって意識面に浮かび上がってくる一連のプロセスであると理解したのである。
 (1)の論文で解明された無意識の存在とその構造分析から、(2)では患者に知られていない抑圧抵抗の克服という分析医の仕事は、患者において「抑圧されたもの」は言語的記憶として再生されるのではなく、行為として再現されるがゆえに、行為の反復の強制とその具体的転移の徹底的検討として遂行されねばならないとされる。更に、(3)(4)では、「無意識」と「前意識」の境にある表象について行われる過程である「抑圧」について、以下のように考察された。
 ある心理的作用が「無意識」から「意識(または前意識)」へ移動するとは、(その心理的作用の)表象が意識面に「記録」されるが、同時に、本来の無意識の「記録」も存続している、と仮定することが出来る。しかし、この二つは、患者が分析医から聞かされた「抑圧表象」と患者自身が体験した無意識の「抑圧表象」のように、全く異なったものであり、従って、意識化される「抑圧表象」とは、代理表象によって、無意識の「抑圧」そのものは意識化されることを防ぎ抑圧を維持しつつ、同時に「意識(または前意識)」体系のための場をあたえられたのである。
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