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自発的開示情報に対する監査人の対応に関する研究

会計情報学科 准教授 笠井 直樹

 本研究の目的は,近年多くの企業が自発的に開示を行なっている非財務情報等と当該情報に対する監査人の対応の実態を把握・分析することである。企業の任意開示情報は多岐にわたるが,本研究では主に企業価値評価との関連性の高いNon-GAAP指標に注目する。
 近年,欧米等を中心にNon-GAAP指標の開示が積極的に行われており,特に経営者が投資家に対して自社の業績をアピールするために当該指標を利用する傾向にある。会計基準等に基づく従来のGAAP情報とは異なり,Non-GAAP指標は一般的に企業が投資家向けに財務諸表外で自発的に開示する情報であることから,基本的に財務諸表監査の対象とはならない。したがって,当該指標は,一般的にその信頼性が担保されていない状態で開示されていることになる。同指標の開示が一般化しているアメリカでは,規制当局であるSECがNon-GAAP指標の開示を対象とするガイドラインや声明を個々に公表し,対応している。また,わが国においても当該指標の開示実務が徐々に進みつつあることから,その信頼性の担保の議論についても今後求められることになると予想される。
 Non-GAAP指標については,企業の任意開示情報であるため,開示実態の詳細の把握とともに,研究実施に必要な基礎資料・整備等が必要である。 そこで,まずはデータ・ベースの構築および先行研究の整理を進めるとともに,国内における開示傾向と監査人の対応について分析を行った。
 一般的に,国内においてNon-GAAP指標は決算説明資料やアニュアルレポート等の財務諸表外において開示される傾向にあるが,IFRS適用企業においては,当該指標は財務諸表に開示される。具体的には,IFRSが「営業利益」等の段階利益の開示を基本的に求めていないため,IFRS適用企業が財務諸表において営業利益等の段落利益を開示している場合,当該情報はNon-GAAP指標の一つとして位置づけられ,財務諸表監査の対象となるケースが考えられる。
 ただ,国内だけでなく国際的にも財務諸表外で開示されるNon-GAAP指標については監査人による対応が基本的に行われていないと考えられるため,当該Non-GAAP指標と財務諸表監査実務との関連性についてより詳細に検討する必要がある。
 こうした財務諸表内外におけるNon-GAAP指標の開示実態と監査人との関連性についての議論をとりまとめ,2023年度中に論文として公表する予定である。Non-GAAP指標と監査人の対応の論点を取り上げた研究は国際的にも進展しておらず,今後その研究成果の蓄積が進んでいくことが予想される。今後の科研費申請も含め他の研究助成を利用し引き続き関連プロジェクトを継続していく予定である。  
【結果発表】
1. 結果発表の時期 2023年4月~2024年3月
2. 結果発表の方法 2023年度中にワーキング・ペーパー,学術雑誌等において公表する予定


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