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投資協定仲裁が国内法を解釈・適用する際における国内諸機関の法実行への尊重

社会システム学科 教授 坂田 雅夫

 本研究は、国際裁判所は国内法関係の事項を取り扱う際に、当該国家の国内諸機関の判断をどのように扱うのかを分析したものである。これは、国境を越える紛争において、複数の裁判手続きが利用可能となっている現状から、それぞれの裁判手続きが相互にどのように影響または自重しているのかを分析する大きな問題意識に基づいている。
 本研究の実施方法は、専ら裁判判決文章および関連する国家実行の分析によった。
 本研究の経過は次の通りである。まず2019年度中の仲裁判例の分析を日本国際経済法学会年報に纏めた。また11月には関連研究の重要な洋書の書評報告を研究会で行った。12月には、EU法と投資仲裁との関係で、EU法の解釈適用が関係する限り、投資仲裁の管轄権が失われるとする最近のEU各国の主張および欧州司法裁判所の判例を分析する論文を公表した。
 

関連して次の二つの論文・ノートを公表した。又関連して次の報告を行った。

  1. 「EU諸国間投資協定仲裁のEU法適合性問題」『滋賀大学経済学部研究年報』27巻25-40頁
  2. 「2019年 貿易・投資紛争事例の概況:投資仲裁決定」『日本国際経済法学会年報』29号229-236頁
  3. 「【書籍紹介】Daniel Peat, Comparative Reasoning in International Courts and Tribunals (Cambridge University Press, 2019)」オンライン(2020年11月7日)(京都大学国際法研究会での報告)

1.論文は国際裁判所における国内法の位置づけを巡る研究の具体例として、欧州司法裁判所の諸判例を取り上げて、EU法と投資仲裁の関係を論じたものである。欧州司法裁判所はEU法の解釈に関係する限り、欧州司法裁判所が優先的かつ排他的な解釈権を持っており、欧州司法裁判所の統制に服さない裁判手続きがEU法を解釈することはEU法に反すると判断を下した。 それを受けて、欧州各国はEUI法を解釈する可能性のある投資協定仲裁は管轄を欠くとの声明を発表した。投資仲裁側は、欧州司法裁判所及び欧州各国の声明を真っ向から否定する判断を今日まで繰り返している。この1.論文では関連する判例を分析し、欧州司法裁判所判例および欧州各国の主張の論理的欠点を指摘した。
2.ノートは日本国際経済法学会の機関誌において2019年の判例動向を回顧したものである。
3.報告は、国際裁判における国内法言及の態様について分析した書を紹介したものである。


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