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監査担当パートナーおよび監査チーム・メンバーの属性が監査の品質に及ぼす影響

会計情報学科 准教授 笠井 直樹

 これまでの研究プロジェクトでは主に,会計発生高関連の指標を監査の品質の代理指標として用いてきたが,本研究では代替指標としてゴーイング・コンサーンや監査報酬,会計不正の有無等といった複数の指標を用い監査人側の特性との関係について検証を行った。特に,ゴーイング・コンサーンや会計不正に関する指標は,監査品質の低さについて(会計発生高等の指標に比して)より直接的に捉えることが可能であることから,多くの代理指標に含まれるノイズの問題を軽減することができる。
 分析の結果,監査品質に関する複数の指標とチームの規模・スタッフの職位の違いとの間に一定の関係性が確認されたが,監査品質の指標によっては異なる結果が示されたため,代理指標の妥当性については検討の余地がある。また,監査人の業種専門性の高さといった,多くの先行研究で指摘されてきた監査品質に関連する指標についても,個々の監査担当者レベルでの特性の違いが,監査チームの構成および監査品質に影響を及ぼすことが確認できた。
 さらに,本研究の分析対象となっている個々の監査責任者・チーム構成といった論点は,個々の監査人の監査判断の問題との関連性が高いが,監査判断の問題を検証するには,公表データのみに基づいた分析だけでは限界があるため,別途事例分析も実施した。わが国の事例では,監査判断の問題についてその詳細が明らかにされることはないため,アメリカの規制当局による過去の摘発事例の資料を収集し分析を行った。
 公表データに基づく分析結果と事例研究の成果を直接結びつけることは困難であるが,データ分析により得られた知見と事例研究において確認された個々の監査人の監査判断や監査チームの問題を擦り合わせることにより,監査品質に影響を及ぼす要因を特定することが可能になると考えられる。
 当該分析結果を取りまとめ,2021年度中に論文として公表する予定である。今回のプロジェクトを含め,これまで実施してきた関連するプロジェクト全体を通して,わが国における監査責任者を含む監査チーム全体の特徴を様々な観点から捉えることを目的として設定している。個々の監査人の監査判断や監査チームの論点を包括的に分析するためには,より多くの指標・データ・事例が必要であることから,今後の科研費申請も含め他の研究助成を利用し引き続き関連プロジェクトを継続していく予定である。

【結果発表】

1. 結果発表の時期 2021年4月?2022年3月
2. 結果発表の方法 2021年度中にワーキング・ペーパー,学術雑誌等において公表する予定。


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