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質的計量分析による金融危機の要因分解

ファイナンス学科 教授 吉田 裕司

令和元年4月6日、"International Portfolio Rebalancing and Equity Market Spillovers"日本金融学会・国際金融部会、大阪、招聘発表者
(1) インフォーマのデータベースから、66ヵ国の日次株式流入を利用して、主成分分析を活用することで日次のグローバル株式資本流入指数を作成した。これは非常にオリジナリティの高い指数となり、公表後には他の研究者に活用される可能性がある。
(2) 次に各国への資本流入は、(i)各国独自の理由による部分と、(ii)グローバルのトレンドによる部分に分けられるとするモデルを想定し、原データを上記の二つの要因に分解した。具体的には、原データをグローバル株式資本流入指数に回帰を行い、内挿部分を後者の(ii)とし、残差を前者の(i)とした。
(3)二国間の株式資本流入の相関を推定するために、(a)原データによる分析と(b)グローバル要因を除去したデータによる分析を、VAR-GARCHモデルによって推定を行った。
結果としては、演算時間が莫大になるために、まだ全ての国に試すことは出来ていないが、隣国のペアとしての分析をイタリアとフランスについて行った。日次ごとに変化する時変相関係数は、2007年7月から2015年7月までの期間の分析では、原データでは0.2~0.9に激しく変動しているが、グローバル要因を除去した分析では0.3~0.8の間で緩やかに変動していることを示すことが出来た。

5月25~26日、"International Portfolio Rebalancing and Equity Market Spillovers"日本金融学会、学習院大学
(1) 4月に報告したVAR-GARCHの手法では、最尤法によるパラメター推定において収束されないケースが多く出てきた。そのために、分析手法を変更して、サンプル期間を少しずつずらしていくローリング法にて、時変的な相関係数を得ることにした。
(2) さらに、注目する相関係数をこれまでの(i)二国間の株式資本流入だけではなく、(ii)一つ目の国の株式資本流入と株式リターンの相関、(iii)もう一方の国の株式資本流入と株式リターンの相関、(iv)二国間の株式リターンの相関、の4つのダイナミックな相関を一組(二国)について計測した。
(3)次に、上記の(i)と(iv)の同様にローリング法にて、ダイナミックな相関を計測した。これは、本研究のオリジナリティの高い貢献でもあり、「co-movement of co-movements」と呼んでいる。
(4)分析を進めているうちに、判明したのが上記の「co-movement of co-movements」には見せかけの相関、もしくは統計的に有意でない第一次の相関を基にした見せかけの相関が計測されていることである。この問題を克服するために、二つの基準を設け、その基準を満たしている時のみ、(i)の相関の増減が(ii)の相関の増減を誘導していると正しく解釈できる。
(5) 主要な結果としては、世界の各地域による二国間分析では、アジア地域では平均3.25%の期間で「二国間の株式資本流入」の相関の高まりが、「二国間の株式リターン」の相関の高まりをもたらしていることを明確に出来た。一方、欧州地域ではこの数値はわずか0.11%の期間だけであることが明らかになった。

 


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