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フランスの地域における産業雇用政策に関する調査

経済学科 教授 荒井 壽夫
 当初の予定は、フランスの雇用政策とりわけ求職者の雇用復帰支援施策としての「職業保障付与契約」(CSP)の地域における実施状況の調査であったが、コンピエーニュ市を含む地域の公共職業安定所とコンピエーニュ市役所との連絡がうまくゆかず職安の担当者が来なかったため、当市の市役所幹部による「コンピエーニュ地域都市圏」(ARC)の地域産業雇用政策の説明とそれへの質疑応答が今回の訪問調査の内容であった。
 市幹部の説明と配布資料によれば、都市圏の雇用者数から見た産業構造としては、大まかにはサービス業、工業、商業、建設公共事業の順で、ホテル・レストラン業や教育と結びついた雇用が増えている。今後の地域経済発展の政策と展望については、環境保全型化学や自動車、等の大企業の事業所進出コンピエーニュ工科大学との産学協同を核とする産業基盤整備による地域経済の発展と雇用創出、そしてまたオワーズ河岸のホテルと散策船の活用、都市圏内の国有林内の森林公園の整備、中世以来の「皇帝都市」としての歴史文化施設の活用、等による観光業の発展による雇用創出が強調された。 失業・不安定雇用対策としては、リサイクル事業等の非営利企業の誘導・支援による雇用創出と「現地業務局」による若者への手厚い就労支援による雇用の実現・復帰についての一定の成果が報告された。
 「少子化」と「自治体消滅」が議論されている日本の地域自治体の観点から注目されるのは、以上の政策の他に、住宅パークの整備による人口増加率を上回る特に低家賃住宅への建設投資、地域商店・手工業者による店舗刷新・商店街現代化への支援そして都市圏内路線バスの無料化である。これらの政策は明らかに若者カップルの定住を促進し、都市圏内の勤労者・住民の労働と生活を支え購買力の向上を間接的に支えており、今日必要とされている地域内経済循環の観点から注目すべき地域政策である。
 以上のような知見が今回の訪問調査の成果である。


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