古代近江関係史料の文献調査にもとづくeラーニング教材の開発
特任准教授 鈴木 正信
これまで応募者は、平成23年度に「陵水学術後援会学術調査・研究助成」を獲得し、滋賀県域の遺跡・史跡を紹介するeラーニング教材「縄文時代の近江」「弥生時代の近江」「古墳時代の近江」「大岩山遺跡」「雪野山古墳」を試作した。平成24年度には「滋賀大学経済学部学術後援基金」を獲得し、近江の地域史学習に資するeラーニング教材「滋賀県の弥生・古墳時代」と、近江国に関係する古代史料の解読に必要とされる異体字の学習に資する「異体字テスト」の試作を行い、担当講義に実践導入して改良を加えた。そこで平成25年度は、前年度までの研究成果と教材作成ノウハウを発展的に継承し、近江の歴史とその魅力をより多くの学生に伝えることを目指して、古代近江に深く関係する人物として、比叡山延暦寺・長等山園城寺(三井寺)を拠点に活躍した天台寺門宗の宗祖・智証大師円珍(814~891)にスポットを当てた。
具体的には、国宝に指定されている「智証大師関係文書典籍」の中から、円珍の出身氏族である讃岐国因支首氏(のち和気公氏に改姓)と伊予国御村別氏との系譜関係を記録した『円珍俗姓系図』の原寸大コロタイプ複製版を入手し、その史料調査を実施した。そして、『円珍俗姓系図』の記載内容に関連する『日本書紀』『日本三代実録』の記事や、天長10年(833)3月25日「円珍度牒」、貞観9年(867)2月16日「讃岐国司解」などの文書類の内容をテキスト化して、「円珍関係史料データベース」を作成した。そして、オープンソースのeラーニングプラットフォームmoodleにより運用されている「滋賀大学学習管理システムSULMS(Shiga University Learning Management System)」の「ウェブページ作成機能」を利用して学内に提供した。同時に、研究室のwebサイト上でも公開を行った(図1)。

本研究の成果の一部は、拙稿「大学の歴史教育におけるeラーニングとアクティブラーニング」(『彦根論叢』第398号、pp.140-154、2014年1月)として発表した。今後も、円珍関係史料に関する研究を継続し、論文等を発表予定である。
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