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均衡地価の推計と金融政策の有効性

経済学科 准教授 得田 雅章
 本研究は、ファンダメンタルズ・モデルから求められた地価の理論値が、実際の住宅地地価並びにその変動をどの程度説明できるかについて、市区別パネルデータを用い共和分分析の手法により検証を行うものであった。従来の先行研究に比べ、クロスセクションのエリアをより細かく設定したことに対処するために、加重平均地価を算出し、これを活用した。市区別のパネルデータを構築するに際し、数々の観測されないデータがあることに対しては、代理変数を用いたり、GISを活用した位置情報からデータを作成したりすることで対応した。
 パネル共和分分析の結果、均衡地価の形成に大きく寄与していたのは、レントの代理変数としての課税対象所得と、自己実現的なバブル生成の可能性を包含する将来地価の期待であった。金利効果の定量化には課題が残るものの、長期均衡価格を形成するファンダメンタルズ・モデルの妥当性が示された。その長期均衡地価からの短期的な変動は、都市部の市区で顕著に表れたが、必ずしも都道府県庁所在地とは限らなかった。
 さらに、長期均衡からの乖離を修正するメカニズムを内包したECM型の地価関数をパネル推計することで、短期動学的な観点から地価変化率の構成要因を探った。いくつかのモデルを検証した結果、理論地価と実際の地価は、短期的には乖離するもののかなり早い段階で均衡へ収束することが総じて示された。
 所得の変化率は大きく寄与する半面、理論とは逆の影響を与える要因が明らかになった。なお、実質金利変化の影響はごく限られたものだった。共和分分析においては、実質金利水準の影響を有意かつ理論に則した符号条件で定量化できなかったのだが、これは市区別データを作成する過程に問題があるのかもしれない。また、物価水準の差別化を、本研究ではGIS活用により図ったのだが、空間重み行列等を適宜設定することでクリアできる可能性を示唆するものであった。

図  今回は得田(2012)に比してクロスセクション方向に大きく拡大したパネルデータを用いたのだが、今後はデータ整備のより効率的なシーケンスを確立し、よりバブル期を含めたより長期を対象としたい。さらに、Sato(1995)のように、金融ストック関連指標を導入したうえで金融政策的な観点から考察することは今後の課題とする。

(参考文献)
Sato, Kazuo (1995), “Bubbles in Japan’s Urban Land Market: An Analysis,” Journal of Asian Economics, Vol.6, No.2, pp. 597?625. 得田雅章(2012)「パネルデータを用いた均衡地価分析:首都圏・中部圏・近畿圏主要都市について」、『滋賀大学経済学部リスク研究センターCRR Discussion Papers』No. J-30、pp.1-17.


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