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紛争解決におけるリスクマネジメントに関する比較文化型調査

企業経営学科学科  教授 奥村哲史
 紛争は国家間、企業間、企業と地域社会の間、また企業と従業員の間、個人間などさまざまなレベルで日常的に発生しています。
 しかし、解決へのアプローチを誤ると問題を悪化させたり、表面的には解決してように見えても遺恨をもたらしたり、同種の問題を再発させ、また解決へのコストを強いられるなどの事態を招きます。ハーバード大学のウィリアム・ユーリ、ノースウエスタン大学ロースクールのスティーブン・ゴールドバーグ、同ケロッグ経営大学院のジーン・ブレットは、労使紛争のフィールド調査から実践的解決教育への取り組みから、紛争の解決のためのアプローチには、利益型、権利型、権力型があるとしました(W.ユーリ、J.ブレット&S.ゴールドバーグ『「話し合い」の技術:紛争解決と交渉のデザイン』白桃書房、2002年)。
 これらのアプローチは、紛争解決にかかるコストによる優劣がり、その視点からは利益型が望ましいものの、紛争にかかる感情的課題や権利に関する解釈の幅の存在により、現実的には、3つのアプローチを状況に応じて、また状況の変化に合わせながら使い分けることが要求されます。
 これまでの比較文化型の実証研究では、各国のもつ文化の価値観と行動規範の違いが、紛争解決アプローチの採用に影響することがわかっています。たとえば、日本、米国、中国の管理職を対象に、同一状況の設定のシミュレ―ションを使った演習では、解決結果の保守的傾向や第三者が介入する場合の権威への依存度などに違いが現われました(J.ブレット『交渉力のプロフェッショナル:MBAで教える理論と実践』ダイヤモンド社、2003年)。
 他国におけるビジネス、また他国とのビジネスにおける紛争に関わるリスクマネジメント、また解決過程におけるリスクマネジメントには、こうした傾向を事前に学ぶことで紛争解決にかかる総コストを削減できる可能性があります。
 また公正に対する知覚、認識の文化的相違は、とりうるアプローチの有効性に作用することから、紛争解決とリスクマネジメントには、文化心理学の手法を経営のコンテクストで活用した調査成果の実用性が期待できます。現在、一企業内の部門間対立に社内の第三者が権限を持って介入する場合、同僚として介入する場合のシミュレーション結果の三カ国比較のデータを解析中で、おって報告する予定です。
*本研究を補助してくださったことを心から御礼申し上げます。
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