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経済学・経済思想の諸パラダイムの比較検討-現代経済学のあるべきパラダイムを求めて-

経済学科  教授 松嶋敦茂
 グローバリゼーションの進展、地球環境問題の深化、急速な高齢社会化など、現代社会が直面している諸問題は経済学のあり方をあらためて問いかけていると解される。また、そうした折だからこそ、クーン及びラカトシュのパラダイム論を統合した松嶋の経済学史方法論、及びそれに立脚した近代的パラダイムと古典的パラダイムとの競合という現代経済学の布置状況の把握はきわめて興味深い。
 本プロジェクトは、うえのような認識に立って、松嶋に指導を受けて今は研究者として育った本学の卒業生、松嶋と研究者として長年交流し豊かな知的刺激を享受してきた者らが過去数年間持続的に開催してきた研究会の成果を公表し、その成果のさらなる展開への一歩を踏み出そうとしたものである。
 上述の研究会には幸い科学研究費補助金の助成を受けることができ、昨年5月に報告書を提出した。本プロジェクトでは、昨年夏に同報告書をあらためて総括したうえで今後の展望を探る研究会を開催し、それを踏まえて加筆ないし改稿された7篇の論文を冊子としてまとめ、公表した。
上述の冊子は以下の7章から成っている。
第1章 「スミス以前の経済学」への科学史的アプローチ
第2章 マルクス経済学のパラダイム論的考察-スミス、マルクス、ポランニー-
第3章 経済の歴史性-歴史学派経済学の現代的意義-
第4章 偶発性と社会理論 - アドルノを中心に-
第5章 モラル・サイエンスとしての経済学の復権-アマルティア・センの場合-
第6章 自己補填的構造、固定資本そして所得分配問題
第7章 モラル・サイエンス=公共哲学としての経済学のパラダイム的基礎
 このように、経済学の生誕時から「古典的パラダイム」を適用した現代的理論展開の試みまで含めて、さまざまな経済学説、社会思想について多様なかたちで、また松嶋の方法論や現代経済学のヴィジョンに触発されて同じ学説を取り扱うにあたっても新鮮な視角から考察を展開することができた。
研究成果発表の時期と方法
なお、研究会の成果については、昨春公刊された松嶋敦茂『功利主義は生き残るか』勁草書房、及び長尾伸一「科学としての経済学の過去と現在-『パラダイム』と『モラル・サイエンス』をめぐって」『彦根論叢』第356号をもぜひ参照されたい。
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