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テニスにおける新たなゲーム分析ソフトの提案と試作

社会システム学科 教授 道上 静香
■目的
テニス競技は、心・技・体そして戦術を駆使して行なわれるスポーツである。特に、テニス選手が試合で勝利するためには、戦術的能力が非常に重要な要素となる。しかしながら、戦術に関する指導は、現在のところ指導者の主観によるところが大きく、客観的な情報に基づいた分析・評価、そして指導を提供しているとは言い難い現状にある。そこで、本研究の目的は、指導現場の視点を取り入れ、リアルタイムで戦術的側面からの分析データが提示できるテニスの新たなゲーム分析ソフトを提案し、それらの試作を実施することである。
■方法
分析対象試合は、国内で開催されている国際大会の女子シングルス17試合とした。2台のVTRカメラを観客席最上段に設置し、試合開始から終了までの全ポイントを撮影した。使用サーフェスは、人工芝コートであった。
分析項目は、指導者や選手からのヒアリング調査に基づき、総ポイント数、1試合あたりの平均ポイント数、総ラリー数、1ポイントあたりのラリー数、1ポイントあたりのラリーテンポ、総ポイント数に対する4本及び6本以内の決定率、ショットの成否及び成否率、勝者がポイントを取得するパターンなどについて分析を行った。
■結果及び考察
1)ポイント数について、分析した総ポイント数は2440ポイント、1試合あたり平均143.5±42.3ポイントのプレイを実施していることが明らかとなった。
2)ラリー数について、分析した総ラリー数は11565回、1試合あたり平均680.3±240.1回のプレイを実施していた。また、1ポイントあたりの平均ラリー数は、4.73±0.65回であった。
3)ラリーテンポについて、サービスからリターンまでの平均ラリーテンポは0.990±0.149秒、それ以降のラリーテンポは、平均1.501±0.417秒であった。
4)総ポイント数に対する4本以内及び6本以内の決定率について、それぞれ57.55%と77.05%であり、早い段階でポイントが決定していることが明らかとなった。
5)ショットの成否及び成否率について、女子プロテニス選手の傾向として、ベースラインからのプレイを中心としてポイントを獲得するベースライン型、次いでベースラインやネットプレイ、あるいは様々なショットを利用して、ポイントを獲得するオールラウンド型の選手がいることが明らかとなった。しかしながら、ネットプレイを中心としてポイントを獲得するネット型の選手を確認することはできなかった。
6)勝者がポイントを取得するパターンについて、女子プロテニス選手の約53.4%が相手よりもエースが多くミスが少ないパターン、次いで約33.3%が相手よりもエースが少なくミスも少ないパターン、13.3%が相手選手よりもエースが多くミスも多いパターンであることが明らかとなった。
 人工芝コートでは、バウンド後にボールが失速するため、長いラリーを要する、ポイントがなかなか決まらない、エースをとることが難しい、などということが指導現場において一般的な考え方となっていた。しかしながら、本研究から得られた1)~4)の分析結果をみると、ハードコートでの分析結果と非常に類似するものであった。すなわち、早いタイミングで、早い段階でポイントが決定していることである。これらのことから、人工芝コートにおいても、よりアグレッシブなテニスのプレイスタイルを構築することが、試合に勝利するために重要であることが明らかとなった。また、5)6)に関する分析結果は、指導している選手や対戦相手の特徴を把握することが可能となった。これらのデータは各選手への個別対応の技術練習、練習すべきショットや試合での戦術を指導する際に大いに役立つものであり、今後のゲーム分析ソフトの開発に有用なデータの1つであることが窺えた。
今後、これらの分析結果を抽出することが可能な、テニスにおける新たなゲーム分析ソフトの開発に着手したいと考えている。これらの開発がすすめば、戦術に関する研究が飛躍的に進むだけでなく、指導レベルも飛躍的に高まるといえる。また、一般のテニス愛好家にも広く汎用可能なソフトを提供することも可能であると考える。
結果発表
1.結果発表の時期:平成25年度
2.結果発表の方法:学会発表もしくは学術雑誌


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