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「経営学の知識」の普及に関する研究

情報管理学科 准教授 服部 泰宏
経営学者は,長きにわたって経営学の発展が企業や社会の発展にとって重要な意味を持つし、科学と実践とが良いパートナーとなりうると信じてきた。ところが,1990年代の後半頃から,アメリカの経営学者を中心に,経営学のレレバンス(有用性)に関わる議論が盛んに行われている。「経営学は意味のある知識を実践に対して提供できているのか」ということである。そこでの主張は、ごく大まかに言えば、経営学の実践家たちが現場での意思決定において経営学を用いることが滅多にないということ,その理由は経営学者の理論構築への関心と,現場のマネジャーの「(なぜ,ではなく)どのように,物事は動くのか」という事実を求める関心の間に深刻なギャップがあるからだ,ということである。
こうした欧米の経営学者たちの問題意識に呼応するかたちで、本研究では,経営学的知識の普及の問題に取り組んだ。具体的な研究課題は3つある。1つ目は,これまで、欧米および我が国の研究者たちが、経営学と実践との関係に関してどのような議論を展開してきたのか、ということを整理することである。これは、既存研究のレビューによって達成される。2つ目は、我が国の実践家への経営学の普及の現状や普及を促進する要因を明らかにすることである。経営学のレレバンス(有用性)について問うのであれば、そもそも経営学が実践家のあいだに普及しているのか、普及しているとすれば、それはどのようなチャネルを通じてなのか、知識の普及を促進・阻害する要因とはいったい何か、といった問いからスタートしなければならないと考えるからである。そして3つ目は,経営学を知ることが,実践家にもたらす帰結を明らかにすることである。経営学の普及は、経営の現場をよくするのか、それはいかなる意味でよくするのか。こうした問いに答えてはじめて、経営学がレレバントな学問であるかいなか、という判断ができる。
日本企業に所属する実践家へのヒアリング、および1034名を対象としたウェブサーベイによって、経営学の普及に関わる以下のような事実が明らかになった。
(1)経営学の普及状況
日本においては、経営学が十分にビジネスパーソンたちに普及しているとは言えない。
(2)経営学普及のチャネル
経営学についての知識は,書籍やテレビ,経済新聞といったマス・メディアを主たるチャネルとして普及していく。反対に、学術雑誌やWeb、口コミのような対人チャネルはそれほど重要性を持たない。
(3)経営学普及を促進・阻害する要因
仕事上の意思決定において,客観的,科学的な根拠・エビデンスを重視する、サイエンス志向の強い実践家は、経営学の知識の摂取を忌避する傾向にある。他方で、経営学を摂取する傾向にあるのは、キャリアに関わる種々の選択を主体的に行うことのできる、いわばキャリアの成熟である。
(4)経営学を知ることの実践的帰結
経営学の知識は、個人の組織内昇進を促進する効果を持つ。他方で、金銭的報酬の上昇には繋がらず、昇進を通じての間接効果がみられるのみである。
結果発表
 1.結果発表の時期 2013年4月~2013年6月
  2.結果発表の方法
(1)2013年度組織学会研究発表大会シンポジウムにおける報告(2013年6月)
(2)横浜国立大学経営学部Working PaperNo.312「経営学の普及と実践的帰結:実証研究」(2013年4月)

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