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顧客満足の構造とその文化的差異に関する研究

社会システム学科 教授 神山 進
 パソコン購入のための10万円の支出とディズニーランドでの遊興費10万円の支出は、同じ10万円の支出でも質的内容はかなり違っている。すなわちパソコンへの支出の半分以上は、実用価値をもつ道具への消費(実用消費)であるが、ディズニーランドでの遊興費支出の半分以上は、喜び、非日常、驚き、冒険などのような「夢の体験」という快楽価値をもった経験への消費(快楽消費)であろう。そして後者の快楽消費は、有形の物財以上に、サービス財としてのさまざまなサービス商品の利用においていっそう重視されるであろう。
 今回、陵水学術後援会より助成を受けた調査・研究「顧客満足の構造とその文化的差異に関する研究」は、特に発展・成長度が異なると推測される日中のテーマパークを中心にして顧客満足に関する実証的調査を行い、顧客満足の構造分析と顧客満足構造の文化的差異の解明を意図し、また快楽消費の観点より顧客感動体験にかかわる質的データの収集と分析を目的にした。
 そのため、日中のテーマパークを対象にして顧客満足度調査(量的調査)を行い、また顧客への面接調査・顧客反応を伝える各種媒体の内容分析(質的調査)を行った。また、顧客満足に関する基礎的モデルである期待不一致モデル(顧客の利用前の期待と利用後の成果の不一致によって顧客満足を評価するモデル)を基礎にして、さらに今回の調査・研究では顧客感動や係員の接遇を入れた新しいモデルを構築し、テーマパークを中心にして顧客満足を総合的に評価した。
 得られた結果として、テーマパークのようなサービス業では、実用消費における顧客満足をほどよく説明できる期待不一致モデルが、顧客感動や係員の接遇によってもたらされる快楽消費を考慮した新しい顧客満足モデルによって修正される必要性が明示された。また、日中間でのテーマパークの発展度や先行度の差もデータに顕著に表された。
 今後、本学術調査・研究助成によって得られた貴重な実証データを、未分析のデータも含めて多様に活用し、さまざまなサービス業に対象を拡大して顧客満足の量的・質的研究を行うこと、特にサービス業の「もてなし(ホスピタリティ;hospitality)」において重視される顧客感動を軸に期待不一致モデルの修正を行うこと、そして顧客感動を「快楽消費と消費経験論」および「快楽消費志向マーケティングと消費者心理」という視点より探求することによって、顧客が体験する理性的で合理的なよさの評価だけでなく、感性的で非合理的なよろこびを包摂した「顧客満足と快楽消費行動」の研究を深化させていきたい。

結果発表
1.結果発表の時期;平成25年度内を予定 
2.結果発表の方法;彦根論叢、繊維製品消費科学、広告科学、消費者行動研究などの紀要および学会誌

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