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大正期の小樽高商教育と文人たち―高浜年尾を中心として―

社会システム学科 准教授 菊地利奈
研 究 成 果
 これまで研究をすすめてきた小樽高等商業高校の英語教師小林象三、その教え子の伊藤整の資料にくわえ、平成21年度は、高浜虚子の後を継ぎホトトギス派を実質的にささえた高浜年尾の文学活動における小樽高商教育の影響を考察するため、伊藤整と同時期に小樽高商で学んでいた高浜年尾について調査をすすめた。
 第一に、大正末期の小樽高商教育が彼らの文学的興味にいかにこたえるものであったかを調査する資料として、当時伊藤整や高浜年尾を教えていた英語教員小林象三を実際に知る小樽商科大学の卒業生木田敏斌氏、木嶋正氏にご協力いただき、インタビューをおこなった。
 第二に、高浜年尾の著作活動は、主に俳諧関連雑誌であったため、神奈川近代文学館、鎌倉文学館などを中心に、『ホトトギス』など、年尾が活躍した年代の俳諧誌の調査をおこなった。また、日本詩学会に出席し、俳諧情報収集につとめた。
 第三に、父高浜虚子を敬愛し、虚子の意志を俳諧で引き継ごうと生涯献身的につとめた年尾の文学観を調査すべく、父子関係に注目し、虚子をはじめ、虚子の師であった正岡子規、虚子と年尾がその伝統を守ろうとした芭蕉について調査をすすめ、年尾のいとこにあたる池内たけしや妹立子の随筆等を調査し、虚子と年尾の関係性を明らかにすべく資料収集につとめた。(書籍購入費や、資料収集にかたった旅費については、陵水学術後援会学術調査・研究助成金以外の予算でおぎなったことが多かったため、別紙支出内訳表に記載されていないものがあることを、ここに申し添える)。
 調査の結果、高浜年尾が鎌倉から、はるばる小樽高等商業高校へ進学した理由、留年した事情、小樽滞在記の生活の模様などが、あきらかになった。また、当時、年尾が小樽に滞在していたことから、虚子が小樽を訪問し、結果として、年尾の小樽高商への進学が、小樽における俳諧を活気づけたことなどもあきらかになった。
 その他、小樽高商在学期間中に、伊藤整と高浜年尾の間には、面識もほとんどなく交流もなかったが、後にふたりが日本文壇で活躍するようになっておこなった対談を発見できたことにより、当時の小樽高商の学風などがよりあきらかになった。
 当初の研究計画としては、小樽商科大学での資料収集を予定していたが、私の健康状態から出張を中止した。また、平成22年4月25日に京大会館で予定されていた講演(「小樽高等商業高校と文人たち」)も、健康上の理由で中止となった。計画通りに遂行できなかった点もあったが、小樽商科大学のアーカイブ電子化がすすみ、資料収集に大きな支障が生じなかったことは幸いであった。
 上記調査と研究の成果は、小林象三、伊藤整、高浜年尾の3名を中心とした小樽高商教育についての論文として、『小樽商科大学百年史』(2011年7月出版予定)に執筆、寄稿する予定である。

結果発表
 1.結果発表の時期
     2011年7月 
  2.結果発表の方法
     『小樽商科大学百年史』への論文寄稿

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