経済学部

TOP研究と社会連携経済学部研究情報陵水学術後援会学術調査・研究助成による研究成果陵水学術後援会学術調査・研究助成による研究成果H21 ≫ 近現代滋賀県地方における企業資料の収集と研究 -「営業報告書」を中心に-

近現代滋賀県地方における企業史料の収集と研究―「営業報告書」を中心に―

経済学科 教授 筒井正夫
研 究 成 果
 本研究は、「近現代滋賀県地方における企業史料の収集と研究」を課題とし、当初は滋賀県関連の企業の基礎資料である「営業報告書」の収集と分析を行う事を目的にスタートした。営業報告書は、経済経営研究所に、滋賀県以外のものも含め約100点が所蔵されているが、さらにその充実を図ることを期したものである。しかしながら雄松堂から滋賀県関連の営業報告書を収集・撮影したマイクロフィルムが販売されていることから、この購入を図書館に依頼することとし、営業報告書以外の滋賀県に由来する企業の基礎資料の収集と分析に主目的を設定した。幸い、図書館において上記滋賀県関連企業の営業報告書は年度末に購入の運びとなったので、本研究の目的に資するところはなはだ大きく、関係当局のご配慮に大いに感謝したい。
 本研究では、明治期の殖産興業政策の中で滋賀県の蚕糸業の発展に多大な足跡を残したにもかかわらず、ほとんど基礎資料の収集と分析が進んでいない県営彦根製糸場の資料収集を主要な課題とした。 彦根製糸場の資料は、滋賀県庁、彦根城博物館井伊家資料、横浜開港資料館の3箇所に分散して残されており、また本学部付属史料館にも彦根製糸場に金融支援を行なった第百三十三国立銀行の史料が残されている。
 そこでまず横浜開港資料館に二度調査に出向き、資料内容の確認と撮影作業を実施した。さらに県庁資料、井伊家資料、本学史料館所蔵資料についても、大学院生や学生を雇って資料調査と撮影を実施した。彦根製糸場の全資料は膨大であり、今回はその全部を撮影できなかったが、主要な貴重史料の撮影を果たすことができた。それら撮影資料は、所蔵先および内容に沿って分類し、撮影目録を作成し、重要資料については印刷して簡易製本した。撮影史料の内容は、設立や営業に関する申請・許諾等の書類、彦根製製糸場の営業報告、金融関連、工場建物関連資料、労務関連(従業員名簿、賃金、業務形態等)、販売ならびに原料購入関係、等々と多岐にわたり、数量は膨大に上った。
 その撮影資料をもとに彦根製糸場の経営内容、発展過程の実体分析を進めた。その成果の一部は、2009年度社会経済史学会大会において「士族授産・殖産興業の再検討―滋賀県営彦根製糸場と第百三十三国立銀行の事例を通してみた―」として報告することができた。そこでは従来ほとんど明らかにされなかった彦根製糸場と富岡製糸場との関連、彦根製糸場設立の具体的経緯、閉場の原因、滋賀県蚕糸業に与えた多面的影響等が解明された。今後とも、資料整理と分析を続け、『彦根論叢』などに随時発表していきたい。
 そのほか、私が長年研究を進めている静岡県御殿場地方に拠点を置く近江日野商人山中兵右衛門家の資料収集も1回行なった。特に従来収集が不十分であった同家の酒造経営や地主経営関連の資料や同家と地域社会との関わりを示す史料の収集を行なった。さらに同家の本家がある日野町における企業活動や京都・大阪・舞鶴等における企業活動に関連した資料収集も実施した。それらの活動は、平成22年5月に刊行予定の共同研究『近江日野商人の研究』(松元宏編著、日本経済評論社)所収の私の論文「明治期日野における企業活動と山中家の投資事業」に結実し、大いに寄与する事ができた。
結果発表

 1.結果発表の時期 2009年9月 2010年5月
 2.結果発表の方法
  1. 2009年度社会経済史学会大会「士族授産・殖産興業の再検討―滋賀県営彦根製糸場と第百三十三国立銀行の事例を通してみた―」として報告。
  2. 『近江日野商人の研究』(松元宏編著、日本経済評論社)所収、筒井正夫「明治期日野における企業活動と山中家の投資事業」

研究成果一覧のページに戻る