経済学部

TOP研究と社会連携経済学部研究情報陵水学術後援会学術調査・研究助成による研究成果陵水学術後援会学術調査・研究助成による研究成果H20 ≫ 日本における前衛詩運動と翻訳文学の比較文学的研究 'The Act of Reading`(翻訳という行為)が文学作品にもたらす影響

「日本における前衛詩運動と翻訳文学の比較文学的研究」

社会システム学科 准教授 菊地 利奈

研 究 成 果
 平成20年度は、研究計画にあげた5人の詩人のうち、特に西脇順三郎、左川ちか、伊藤整の三人に注目し、研究をすすめた。
研究成果のひとつとして、2008年7月にポルトガルで開催されたIASIL国際学会にて、 「The First Two Translations of 'Chamber Music' in Japan: How the Act of Translation Influenced Japanese Prose-Poetry」という題目で、研究発表をおこなった(2008年7月31日)。 研究発表では、1920年代から日本文壇で注目を集めていたジェイムス・ジョイスの詩集『Chamber Music』が、どのような形で当時の日本詩人らに影響を与えたかを検証した。 具体的には、左川ちか訳の『室楽』(1932年出版)と、西脇順三郎訳の『室内楽』(1933年出版の『ヂョイス詩集』に収録)を分析し、 英語詩を翻訳するという行為が、左川の詩における日本語表現の「新しさ」を生んだことを指摘。当時まだ日本にはなかった「散文詩」の誕生と発展に貢献した可能性について論じた。 また、西脇の作品にみられる従来の日本語文法にはない日本語の使い方、たとえば英語における接続詞や関係詞ににせた形での日本語表現、について言及した。
   さらに、『Chamber Music』の具体的検証について、滋賀大学経済学部ワークショップにて研究報告をおこなった(2008年10月23日)。 『Chamber Music』は36の詩からなりたっているが、ここでは特に第5番目の詩に注目し、 これを初めに日本語に訳した佐藤春夫の訳と、2番目に訳した左川ちかの訳と、3番目に訳した西脇順三郎の訳を比較検討した。ワークショップにおける研究報告内容については、経済経営研究所のHPにて公開している。
(https://mokuroku.biwako.shiga-u.ac.jp/eml/kouenkai2008/WS20081023kikuchi.htm)
 また、左川ちかと伊藤整という、北海道で同時代に育ったふたりがアイルランド文学に惹かれていたこと、特に初期作品においてアイルランド文学からの影響が色濃いことに注目し、 「伊藤整と左川ちかの文学活動にみるアイルランド文学の影響」を現在執筆中である。この論文は、伊藤の詩人としての出発点がイェイツにあったことに注目し、 「大和」から分離された「北海道」という土地に育った伊藤が、「イングランド」ならぬ「アイルランド」の詩人に強く惹かれたことについて、比較文学的視点から分析するものである。 さらに、伊藤の妹的存在であった左川も、伊藤のすすめるアイルランド文学から影響を受け、斬新な手法と言語表現で新しい詩のスタイルを模索した点について、比較文学的視点から論じるものである。 本論文は、平成21年度内に、ワーキングペーパーとして発行し、来年度の日本アイルランド協会発行の学会誌『エール』に投稿することを予定している。
 上記研究をふまえ、今後は平成20年度内に収集した北園克衛関連資料(『ゲエ・ギムギガム・プルルル・ギムゲム(Ge. Gjmgjgam. Prrr. Gjmgem)』など)をも含め、 北園克衛や左川ちからが活躍した1920年代から30年代の日本詩壇における前衛詩運動に、英語詩及び翻訳文学が与えた影響について、さらなる考察を深めるものとする。
結果発表
 1.結果発表の時期:(1)2008年7月31日、(2)2008年10月23日、(3)平成21年度内、?平成22年度内
  2.結果発表の方法 (1)IASIL国際大会研究発表(済)、(2)滋賀大学経済学部ワークショップ研究報告(済)、(3)ワーキングペーパー発行(予定)、(4)学会誌(『エール』)あるいは『彦根論叢』に論文掲載(予定)


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