経済学部

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「満州」における日本人の受け入れに関する比較社会学的研究-旧制彦根高商修学旅行の訪問先から-

社会システム学科 准教授 鍋倉 聰

 本研究では、「満州」における日本人の受け入れに関して比較社会学的研究を行うべく、 その先行調査として、2007年9月15日から29日にかけて旧制彦根高商修学旅行の訪問先を訪れ、 当地の図書館における旧満州日本語文献の所在状況を調査した。
 かつて「満州」と呼ばれた中国東北地方には、多くの日本人が居住していた。 日本人とともに存在していた日本語文献は、今でも現地で所蔵されている。 これら日本語文献の所蔵先について、資料的価値のある文献は、 刊行された文献目録等で確認することができるが、各図書館にはそれ以外にも多くの日本語文献が所蔵されている。 一方、中国は現在大きな変化の只中にあり、文献を保存する図書館や資料館等の建物自体の移転や改築が進む中、 日本語文献の保存も大きな変化に直面せざるを得なくなっている。 こうした変化の只中にある日本語文献の現状の一端について、 本研究では、中国遼寧省及び吉林省の6つの図書館を訪れることで明らかにした。
大連市図書館
満鉄(南満州鉄道)図書館が、当時の建物のまま現在では大連市図書館魯迅路分館となっており、 その二階の「日本文献査閲室」に、1945年以前に出版された日本語文献がある。 本図書館の目録として、『館蔵古籍中日文東北地方文献資料』全六分冊があり、 全603ページの蔵書数を概算すると、約一万冊に達した。 担当職員によれば満鉄関係の文献は約五万冊を所蔵しているそうであり、 所蔵文献はさらにあると考えられる。
瀋陽市図書館
四階に「地方文献研究室・参考咨?室」と「古籍閲覧室」があり、前者に旧満州日本語文献のカード式目録がある。 目録は十箱あり、画数順に並べられている。ただし、旧字と中国式の簡体字が混同されているので、注意を要する。 蔵書には、「奉天八幡町図書館」といった、町の図書館にあるような戦前当時の一般書が多くそのまま所蔵されている。
撫順市図書館
 2001年に、13階建ての新館へ移った。旧館から約1km離れた渾河の対岸に位置する。 担当職員の話によれば、旧満州時代の文献は四千冊以上あるが、新館に移った際、上階に目録とともに収納してしまった。 現在は閲覧することができず、公開時期は不明であった。公開/非公開の基準は、必ずしも内容に依るのではないそうである。
鞍山市図書館
館長室や副館長室などがある五階の奥の部屋に、満州時代の日本語文献がある。 三棚分ある冊数を数えたところ451冊あった。これらは公開用だが、現在整理中で、整理が終わり次第公開する予定である。 文献に製鉄関係の本が多いのが、製鉄都市・鞍山の特徴を示している。 担当職員の話によれば、このほかに未公開の本が約二千冊あまりある。
長春市図書館
四階の「古籍査閲室」「地方分権査閲室」が同室にあり、そこに旧満州日本語文献がある。 カード式の「偽満文献書名目録」と「偽満文献分類目録」がそれぞれ目録箱に5箱ずつあり、開放されている。 このほか、「旧日文書名目録」が37箱あるが、これは非開放で中を見ることができない。
吉林省図書館
三階の「歴史文献部閲覧室」に、旧満州日本語文献がある。カード式目録は、「旧日文期間分類目録」が1箱、 「旧日文図書目録」が20箱ある。後者はカタカナでアイウエオ順になっているが、 多くが中国語風の読み方になっているので注意を要する。例えば、北京は「ペイチン」、華北は「ホアペイ」になっている。 学習参考書など図書館に普通にあるような本が数多くある。現在デジタル化を進めていて、一部の本は閲覧できない。 デジタル化後の本は、現物の閲覧はできなくなるそうである。
おわりに
 旧満州日本語文献の保存状態はよく、中には当時の貸し出しカードまで保存されているものもあった。 書籍を大切にすることに関して、日中の違いはない。こうした共通性を共有して文献資料を共用していくことが、 今後日中間の交流を進めていく上で一層重要になるであろう。
結果発表
 1.結果発表の時期 平成19年度及び平成20年度
  2.結果発表の方法 ワークショップ及びワーキングペーパー(もしくは『彦根論叢』)での発表


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