新しい非線形写像の不動点定理と不動点近似
ファイナンス学科 教授 近藤 豊将
企業にとっての利潤最大化問題、政府にとっての予算の最適配分問題など、社会における最適化問題の重要性は論を俟たない。最適化問題の解集合は、ある種の非線形写像の不動点集合と一致することが知られている。この事実は、最適化理論と非線形解析学（における不動点理論）との深い関連性と、一方の研究の深化が他方へかなり直接的に波及することを示している。最適化問題と特にゆかりが深いのは、非拡大写像と呼ばれるクラスの写像である。本研究では、この非拡大写像を拡張した新しい非線形写像を定義し、その不動点の存在とともに、不動点を近似する点列の構成方法を研究した。
論文１は、以前の研究のポイントをわかりやすく解説した論文である。論文２については、これまで用いられてきた写像を特殊ケースとして包含する新しい非線形写像を定義し、その写像について、不動点近似法を提示した。論文3は、複数の非線形写像の共通不動点を近似する方法を示した。既存のものと比較してかなり簡明な方法を発見したものである。この研究の成果は国際会議で2度発表した。論文４は、論文３をよりシンプルにして紹介したものである。論文５では、論文２で導入した非線形写像について、論文2とは異なる2種類の不動点近似法を証明した。論文6では、論文３で提示した共通不動点の近似法を発展させ、さらに2種類の新しい点列の構成方法を示すとともに、複数の項に誤差を導入することに成功した。論文7では、論文６で用いた点列の構成方法を基に、共通不動点へのより強い収束を示した。
論文
- "Existence and Convergence Results of Normally 2-Generalized Hybrid Mappings in Hilbert Spaces", (Atsumasa Kondo and Wataru Takahashi), Kyoto University RIMS Kokyuroku, No. 2112, ,126-133, 2019. （査読なし）
- "Attractive Point and Nonlinear Ergodic Theorems for Generic 2-Generalized Hybrid Mappings in Hilbert Spaces", (Atsumasa Kondo and Wataru Takahashi), Linear and Nonlinear Analysis, Vol. 5, No. 1, 87-103, 2019. （査読あり）
- "Approximation of a Common Attractive Point of Noncommutative Normally 2-Generalized Hybrid Mappings in Hilbert Spaces", (Atsumasa Kondo and Wataru Takahashi), Linear and Nonlinear Analysis, Vol. 5, No. 2, 279-297, 2019. （査読あり）
- "Convergence Theorems to Common Fixed Points of Two Nonexpansive Mappings in Hilbert Spaces", (Atsumasa Kondo), forthcoming in Kyoto University RIMS Kokyuroku. （査読なし）
- "Attractive Point, Weak and Strong Convergence Theorems for Generic 2-Generalized Hybrid Mappings in Hilbert Spaces", (Atsumasa Kondo and Wataru Takahashi) forthcoming in Linear and Nonlinear Analysis（査読あり）
- "Weak Convergence Theorems to Common Attractive Points of Normally 2-Generalized Hybrid Mappings with Errors", (Atsumasa Kondo and Wataru Takahashi) forthcoming in Journal of Nonlinear and Convex Analysis（査読あり）
- "Strong Convergence Theorems to Common Attractive Points of Normally 2-Generalized Hybrid Mappings and an Application", (Atsumasa Kondo and Wataru Takahashi)（査読なし）
学会発表
- "Approximation of a Common Attractive Point of Noncommutative Normally 2-Generalized Hybrid Mappings in Hilbert Spaces", joint conference of "International Conference on Nonlinear Analysis and Convex Analysis (NACA)" and "International Conference on Optimization: Techniques and Applications (ICOTA)", at Future University Hakodate, August 29, 2019.
- "Approximation of a Common Attractive Point of Noncommutative Normally 2-Generalized Hybrid Mappings in Hilbert Spaces", at Kyoto University, September 2, 2019.
結果発表
- 結果発表の時期
上記研究成果の論文１～３については2019年に発表済み。４については2020年度中には京都大学数理解析研究所の講究録に掲載される予定。５～7については未定。 - 結果発表の方法
上記研究成果１については京都大学数理解析研究所の講究録に掲載されている。２、３については国際学術雑誌に掲載されている。４については2020年度中には京都大学数理解析研究所の講究録に掲載される予定。論文５、６についても国際学術雑誌への掲載が決まった。論文７については、査読制の国際会議議事録へ投稿中であるが、現在のところ掲載は未定である。