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第1次世界大戦~昭和恐慌期に至る富士紡績会社の経営分析

経済学科 教授 筒井 正夫

 本研究は、戦前期五大紡の一つに数えられた富士紡績会社を対象に、第1次大戦期から戦後恐慌、関東大震災、そして昭和恐慌期(1914~1932年)に至る時期に於て、企業経営の多面的な実態分析を行うことである。この時期に、富士紡はいかなる経営方針を取り、技術革新とマーケティングを行って業況を進展させたのか、あるいは恐慌や震災によっていかなる損害を被り、その対応策としてどのような経営対策、労務管理政策をとり、リスクマネージメントを講じて経営改善を図っていったかを、静岡県駿東郡小山町に残された一次史料(工場史料)に主として依拠しながら実証的に解明するものである。私は、主に明治期における富士紡の研究をまとめ、2016年11月、『巨大企業と地域社会 富士紡績と静岡県小山町』として刊行した。今回は、それに続く第1次世界大戦~昭和恐慌期に至る富士紡績会社の経営分析のための基礎資料の収集である。
 当初は、富士紡の工場資料が保管されている静岡県駿東郡小山町の資料調査を計画していたが、平成31年度の科学研究費に応募し、工場資料調査は、主としてそちらの資金を見込んで行うこととした。
 したがって今回は、その準備的作業として国立国会図書館へ5回、東京大学付属総合図書館へ1回、東京農工大学付属博物館(旧繊維博物館)へ2回の出張を行って、富士紡の資料のみならず、富士紡が取り扱っている綿紡績、綿布生産、絹糸紡績、絹布(富士絹)生産、中国大陸での在華紡としての活動、そして水力電気発電事業、にわたって、広く文献資料の調査収集を行った。
 国立国会図書館並びに東京大学付属総合図書館では、戦前期に刊行された上記富士紡関連の業種に関する技術書、紡績連合会並びに和田豊治が関連した企業家集団に関する雑誌・史資料、和田豊治・富田鉄之助・日比谷兵左衛門・森村市左衛門等に関する伝記・資料、企業合併並びに操業短縮に関する文献資料、労務関係、工場施設、衛生関係、関東大震災関連、昭和恐慌と綿絹紡績・織物・電気事業との関連を示す文献調査、労務関係では労働争議やILO関連、昭和恐慌期の深夜業廃止等に関する文献調査を行った。また関東大震災が富士紡の関東地方の各工場に与えた影響等についての新聞資料の収集も行った。
 東京農工大学付属博物館(旧繊維博物館)では、保管されている紡績・織布関連の貴重な技術的器具や史資料によって、主としてそれらの技術的な知見を得ることに努めた。
 以上のように、今回は富士紡に関する多面的な文献・史資料の調査・収集を行うことができた。31年度からは、繊維関係を専門とする研究者と共に愛1次世界大戦期から戦後にかけての富士紡の経営発展と地域社会の変化との相互関係の解明をテーマに掲げて、共同研究を発足させ、科学研究費が得られればそれを基盤に共同研究に邁進していきたい。

結果発表

1.結果発表の時期:平成31年度中に、特に代位次大戦期における富士紡の経営史的実態について発表したい。
2.結果発表の方法:『彦根論叢』またはワーキングペーパー紙上に発表したい。


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