経済学部

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複雑な税制と人口変動を伴う経済における財政の維持可能性について

ファイナンス学科 教授 近藤 豊将

 近年、多くの先進諸国では、政府債務が累積しており、財政運営上の大きな制約となっている。特に我が国では、政府債務の対GDP比率は第2次世界大戦中をも上回る水準に達しており、その維持可能性が疑問視されるに至っている。今後、進行する少子高齢化社会をにらみ、限られた財源から、いかに累積債務問題を克服していくかは国家の喫緊の課題である。
 財政の維持可能性を主題とする学術研究は多く蓄積されている。財政の維持可能性を担保する政策ルールについてもBohn のルールとして知られるものなどがある。これは、政府債務の対GDP比率が上昇したならば、プライマリーバランスの対GDP比率を改善せよ、という直感的にもわかりやすい政策ルールである。反面、Bohnのルールを前提とすると、特定の政策がどのように財政の維持可能性を高めるのか、または低めるのかは見えにくくなるきらいがある。
 そのような中で、筆者のこれまでの研究では、財政が維持可能となる政府債務の対GDP比率の上限を導出し、それが政府の政策にどのように依存しているかを明らかにしてきた。ただし、そこでは、技術的な限界から分析の基礎としているモデルには多くの制約が課されていた。
 本研究では、貨幣と人口増加(減少)率をモデルに組み込み、それらが財政の維持可能性にどのように影響するかを研究した。言うまでもなく、デフレーションと少子高齢化は近年の日本経済を語るうえで外すことのできないファクターである。これらを明示的に考慮して財政の維持可能性を研究する意義は、いくら強調してもしすぎることはない。本研究では、筆者が以前作成しておりディスカッションペーパーとして発表していた論文を修正のうえ、国際コンファレンスで報告した(下記学会発表)。今後はさらに修正を重ねて、国際ジャーナルへの掲載を目指すつもりである。
 他方で、応用解析学、数理経済学の分野で、近年、不動点近似法と呼ばれる研究がさかんになってきている。ある写像の不動点は、経済学で現れるナッシュ均衡や最適化問題の解に対応させることができることは知られている。したがって、不動点への収束点列の構成方法を研究することは、ナッシュ均衡や最適化問題の解を近似的に求める研究に直結することになる。筆者は数年前からこの問題に興味を持ち勉強を続けていたのであるが、今回、良い研究テーマに気付いたことから思いのほか研究が進展し、2編の論文を作成することができた。下記論文1は昨年度から今年度の初めにかけて行った研究の成果であり、国際ジャーナルに公刊した。論文2は今年度の研究の成果であり、これも公刊できそうである。

論文

1."Attractive Point and Weak Convergence Theorems for Normally N-Generalized Hybrid Mappings in Hilbert Spaces" (Atsumasa Kondo and Wataru Takahashi), Linear and Nonlinear Analysis, Vol. 3, No. 2, 297-310, October 2017.
2. "Strong Convergence Theorems of Halpern's type for Normally 2-Generalized Hybrid Mappings in Hilbert Spaces" (Atsumasa Kondo and Wataru Takahashi)

学会発表

1.論文"Deflation, Population Decline and Sustainability of Public Debt"を国際コンファレンスConference on Institutions, Markets, and Market Qualityで発表。京都大学。(2018年3月8日)

結果発表

1.結果発表の時期
論文1についてはすでに査読付き国際ジャーナルに公刊済み。論文2についても公刊できる可能性が高い。
2.結果発表の方法
査読付き国際ジャーナルへの掲載を目指す。


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