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ベトナムにおける雇用と人材育成―日本企業のグローバル化進展にむけて―

企業経営学科 教授 弘中史子

 本研究の目的は、ベトナムの雇用制度・慣行を正確に把握した上で,ジェンダー視点を取り入れながら、ベトナムにおける人材育成,とりわけスキル向上のモデルを提示するために,基礎的な研究を進めることにある。
 本研究の意義は次の三点である。第一に,現在ベトナムは,中国やインドネシア,タイと並んで,日本企業にとって重要な海外拠点となっている。そのため,ベトナムにおいてアカデミックな視点から人材育成のモデルを提示することが求められている。第二に,ベトナムは王朝文化が長く続いた後に,植民地,ベトナム戦争を経て南北統一がなされ,社会主義国家として歩んできたという特徴的な歴史があり,それが雇用慣行にも色濃く影響を与えていることから,独自のモデルが必要となる。日本企業がこれまで進出してきた東アジアや東南アジアで蓄積した経験は,そのままベトナムで活用できると限らないのである。第三に,女性の経済的役割が強いベトナムの人材育成・雇用研究においては,ジェンダー視点からの分析による理解が必要である。アジアにおける人材育成や労働市場の構造についてはジェンダー視点からの研究が少ない状況にある。
 今年度は基本的な情報を得るために,1)ベトナム現地での企業インタビュー調査と,2)ベトナムの研究者・専門家との意見交換を中心に実施した。1)については,(a)食品加工産業,(b)ソフトウェア産業,(c)バイオ産業という3つの異なるタイプの企業へのインタビューを実現させることができた。(a)は日系で工場を擁しており,多くのワーカーを雇用した労働集約的な企業である。(b)は日系で大学・大学院卒のエンジニアを中心に雇用した技術集約型企業である。(c)はローカルの企業で,大学院卒の技術者・マネジャーを雇用する技術集約型であるとともに,ローカル企業との合弁で工場を所有しており労働集約的な面も持ち合わせている。その結果,異なる業種,資本(日系・ローカル系),職種の雇用慣行について観察することができた。また,ベトナムの大学教員や専門家からは,当該国で雇用慣行や最近の動向,スキルの向上について情報を収集することができた。
 発見点を整理すると概ね次のようになる。1)ベトナムでは高学歴で高いスキルを持つ人材が一定程度存在し,企業内教育も進展しており,技術集約産業において他国と比較して低い人件費で雇用できる。したがって高い国際競争力につなるがる可能性がある,2)学歴がミニマムでかつ低スキルの人材層においては,給与水準が急上昇しているにもかかわらず技能の向上が遅々としている。そのため,今後ミャンマーやインドといった近隣諸国との競争優位が将来危ぶまれる可能性がある,3)どの企業・職種においても女性が資質の高い労働力として期待されており,企業が女性社員を雇用し育成することに意欲を持ってい。本研究を今後どのように発展させるかについての着想も得ることができた。
結果発表
 1.結果発表の時期  引き続き基礎的な情報収集を継続して,2017年度末を目処に成果を公表したい。
  2.結果発表の方法  試論を展開することから,ワーキングペーパーの形で公表したい。

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