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第二次世界大戦下の高等教育機関としての彦根高等商業学校史の研究

社会システム学科  助教授 阿部安成


 2004年8月8日~11日に長崎大学東南アジア研究所と長崎大学附属図書館経済学部分館で、2004年11月12日に富山大学経済学部資料室で史料の所在調査をおこない、必要に応じて史料の写真撮影をおこなった。調査対象となった史料は、旧制高等商業学校に共通する旧植民地関係資料と、それぞれの高等商業学校関係資料である。両大学における調査では、とくに後者に重点をおいた。長崎大学に所蔵されている長崎高等商業学校関係資料の特徴は、当時の教官の講義録といってよいテキストと学内の報国団報『扶揺』である。富山大学に所蔵されている高岡高等商業学校関係資料の特徴は、学内の報国団報『志貴野』や、同窓会の機関誌、卒業アルバムである。
収集の成果とその活用の一端または予定を記すと、以下のとおりとなる。
 まず第1に、長崎大学東南アジア研究所で所在を確認して写真撮影をした史料『釜山案内』により、戦前期の東アジアにおける三中井百貨店(現在、彦根夢京橋キャッスルロードで洋菓子店を営む株式会社三中井の前身)の一端があきらかになった。三中井百貨店は、釜山の観光に欠かせないデパートとして紹介され、観光案内冊子の裏表紙では、そのシンボルマークである井桁の印が躍動感を表現するに効果のあるデザインとして用いられていた。三中井百貨店の店舗建造物も、そこで売られている商品も、いずれも当時の当地におけるニューモードだったことが想像できる。この『釜山案内』裏表紙の図柄は、2004年10月12日~12月26日に滋賀大学経済経営研究所ホームページで開催した、インターネット企画展「三中井を歴史にさかのぼる」で使用した。この企画展では、前年度の平成15年度陵水学術後援会学術調査・研究助成として採択された「彦根高等商業学校をめぐる比較史研究」(研究報告者、阿部安成)において、山口大学東亜経済研究所で収集した「京城」における三中井の史料も展示した。おそらく、それぞれ長崎大学と山口大学にしかない史料の所在を確認し、それを展示に活用できたことは有意義であった。 このインターネット企画展は、『京都新聞』『読売新聞』『朝日新聞』などで報道され、開催期間中には学内外から多数のアクセスがあった。大学における調査・研究の成果を、学外(とくに地元)に発信するにあたって、インターネットをもちいた広報の効果があらためて確認できた。
 第2に、今回の長崎大学・富山大学における史料調査とその収集により、20世紀前期の高等実業教育機関としての高等商業学校における、(1)アジアにかかわる研究・教育と、(2)戦時下の報国団活動を比較研究する史料が得られた。(1)高岡高等商業学校では、その地域性を活かした日本海経済研究所による研究活動がある一方で、旧制高等商業学校に共通する教育課程(ただしカリキュラムの内容は一律ではない)としての「東亜経済科」が設置されたり、「東亜研究班」が組織されたりした。これは、彦根高等商業学校の「支那科」(のちに「東亜科」)や、小樽高等商業学校や大分高等商業学校につうずる教育課程である。(2)長崎高等商業学校の『扶揺』、高岡高等商業学校の『志貴野』は、彦根高等商業学校の『黎明』などと同様に、戦時下の学内で組織された(学内のサークルや研究会などが一元化された)報国団の機関誌(紙)である。これらの史料により、1930年代後半から1940年代にかけての高等商業学校におけるアジア認識や戦時動員活動を考察することが可能となった。長崎高等商業学校や高岡高等商業学校の事例をふまえることで、彦根高等商業学校史をよりゆたかに考察することができるであろう。その研究成果は、平成17年度に発行される『彦根論叢』で発表する予定である。
結果発表
 結果発表の時期: (1)平成16年10月12日~同年12月26日、(2)平成17年度予定 
 結果発表の方法: (1)インターネット企画展「三中井を歴史にさかのぼる」
            (2)『彦根論叢』に執筆予定
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