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カントリーリスクに関する理論的実証的研究

ファイナンス学科  教授 有馬敏則

1. 研究の目的・概要
 本研究は信用リスクの一種であり、国際金融面で益々重要性が高まっているカントリーリスクに関する理論的実証的研究を再構築することにある。カントリーリスクが第二次大戦後、全世界的に注目を集めた最初の時期は、1973年秋の第一次オイルショック後のことであった。非産油発展途上国への先進諸国の急激な貸付が、不良債権化し、いわゆる「債務累積国問題」として注目を集め、「カントリーリスク」論議が産官学で活発に行なわれた。カントリーリスク論議は1979年末の第2次オイルショックにおいても発生した。国際金融市場において「債権の証券化」を目的とするセキュリタイゼーションの技法が発展するとともに、債務累積国の不良債権処理が進展し、カントリーリスク論議も下火になっていった。しかし20世紀末、特に1980年代後半から国境をこえた経済活動や資金の流れが従来以上に活発化し、グローバリゼーションが進展するとともに、再び「カントリーリスク」問題が注目されるようになってきた。そこで本研究では、まず従来のカントリーリスクの論議をサーベイし、その成果を基礎にグローバル化した21世紀においても通用する「カントリーリスク」の概念を再定義するとともに、アジア諸国とくに中国を中心としたカントリーリスクの実証研究への基礎固めをおこない、カントリーリスク研究の発展に寄与しようとするものである。
2. 研究の実施経過・研究成果
 (1) 従来のカントリーリスク論議に関する内外の文献を収集するとともに、カントリーリスク論議の中心課題の推移、各論点ごとのサーベイをおこない、現状においても妥当する概念と、現状では不適切な概念についての検討をした。 
 (2) 国際金融に携わっている実務家、経済産業省担当者、財務省担当者、日銀担当者、カントリーリスク研究者等々と、現状におけるカントリーリスクの実態と課題について討議をおこなうとともに資料収集をおこなった。
 (3) 従来のカントリーリスク論議は、貸付にともなう信用リスクの大小を個別の貸付相手国ごとに論議するものであった。たとえば、貸付相手国の貿易収支黒字と累積債務額との比較や、経済政策とくにマクロ経済政策と財政収支改善、経済成長、税制、構造改革問題等々について議論するものが大多数を占めていた。  しかしカントリーリスク問題は、グローバル化した現代においては、単にカントリー(貸付相手国)のみの経済・金融中心の議論ではなく、経済・金融の検討に加えて、当局の政治姿勢とその妥当性、その国における個別企業の経営姿勢やビヘイビアといったミクロ次元の検討や、社会・文化・教育・思想・宗教・歴史といった国の根幹にかかわるマクロ的な次元を含めて、総合的にリスクを評価すべき段階にきているといえる。
 (4) その意味でカントリーリスクの評価にあたっては、「単に貸付相手国ごとの信用リスクを経済・金融面からだけ評価するのではなく、当該国の政策・政治姿勢、個別企業の経営姿勢・ビヘイビア、 社会・文化・教育・思想・宗教・歴史についても数値化して総合的に評価すべき」であるといえる。
 (5) 以上のような研究を基礎に、中国におけるカントリーリスクについての予備的な調査をおこなった。その結果は従来評価されてきた以上に、リスクが高いようである。本調査については今後研究を続け、その結果を公表したいと考えている。 
結果発表
 結果発表の時期: 平成17年11月までに公表 
 結果発表の方法: 『彦根論叢』において公表
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