経済学部

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リスクマネジメントの認知心理プロセスの比較文化調査

企業経営学科  教授 奥村哲史


 この研究は、リスク・マネジメントという新しい課題に対して、過去10数年間にわたり実施してきた意思決定者の情報処理プロセス、交渉および紛争解決という社会的相互行為のプロセス、およびそれぞれの比較文化環境における特性に関する実証調査の知見を応用し、リスク・マネジメントにおける担当マネジャーおよび組織過程に何らかの特性を見出そうとする試みだった。国内における文献研究を進めながら、平成16年11月末から12月初めにかけて米国に出張し、各領域の専門家との面談を通し、本研究に適した文化差測定尺度の選択、リスク要因の認知プロセスに関する新しいコンセプト、調査実施方法および可能性について議論を重ねてきた。
1) 文化差測定尺度について これまで奥村がJournal of Applied Psychology, Academy of Management Journal, Journal of Experimental Psychology, Journal of International Management, Negotiation Journalなどに受諾、掲載された研究論文で使用してきた文化差測定尺度は、Harry C. Triandisによる個人主義・集団主義(1972年)およびSharom H. Schwartzによる価値測定尺度(1994年)であった。これらは、さらに基礎データが追加され、信頼性を高めているが、リスク・マネジメントという課題については、より直接的なリスク知覚に関する質問項目を設けることで、静態的なリスク知覚の測定可能性が考えられる。これは主として、米国ノースウエスタン大学ケロッグ経営大学院訪問中のディスカッションによる。
2) リスク要因の認知プロセス 認知プロセスは、人間の情報処理側面を扱う認知心理学における諸概念の利用可能性が高い。脳の情報処理過程に関する実験の成果が、特に過去20年間、経済、経営をはじめとした社会諸科学に頻繁に応用され、1)に関連する文化心理学と共に、神経心理学という複合領域を成長させている。米国カリフォルニア大学ロサンゼルス校ビジネススクール訪問中の議論から、リスク概念自体の日米の文化差が示唆され、未完成ながら新たに適用しうるコンセプトが考えられることが分かった。3) 本格的な実証調査のために 経営、経済のコンテクストでのリスク認知プロセスの研究は、日米だけでなく、旧体制のイデオロギーの残る国々も含めた実証調査に大きな可能性がある。測定尺度の選択、新概念の組み込み、直接的なリスク知覚の調査を織り込んだ多国間調査を実施するため、平成17年度の文部科学省科学研究費を申請している。  以上
結果発表
 結果発表の時期: 結果発表の時期:平成17年度中 
 結果発表の方法: 滋賀大学彦根論叢または滋賀大学経済学部研究年報
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