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滋賀大学経済学部附属史料館にゅうすSAM第8号

平成九年度企画展を振り返って

 史料館では、昨年9月24日から12月25日まで企画展『滋賀県における鉄道の発達と地域社会』を開催しました。近代を象徴する鉄道が滋賀県でどのような経過で発達し、地域社会が鉄道からどのような影響を受けたかを、当時の生の資料や写真で見てもらおうというものでした。館蔵品に加え、関係私鉄・機関・個人等の格別のご厚意により、貴重な原史料・現物を長期にわたって拝借することができ、従来とひと味違う展示となったのでは、と考えております。例えば、近江鉄道開業期のレールは、遠く英国からの輸入品で、当時鉄道建設がいかに高価な投資であり、また製鉄等、産業構造における日英の格差を如実に物語っております。また9月27日には講演会を開催し、専修大学教授麻島昭一先生に「『銀行帳簿』と鉄道」、和光大学教授原田勝正先生に「『畑家文書』と鉄道史研究」という企画展に因んだご講演をお願いしました。(輸入レールの由緒、講演の内容等は当館『研究紀要』31号をご参照下さい。)この企画展開催が広く新聞等でも紹介され、期初に鉄道史学会全国大会が本学で開催され、多くの研究者が学会に参加したこともあって、北は釧路から南は鹿児島まで全国各地から多くの来館者があったことも特色の一つでした。今秋には近代から時代を遡り、中世近江の村落と祭りを中心とする企画展・講演会等の開催を準備中ですので、皆さんのご来館をお待ちします。
(史料館長 小川 功)

ばっくとぅざぱすと その六

 現在、日本は金融界と官界が大きく揺れています。大蔵省とか日本銀行といった金融界の頂上で、贈収賄という汚職が発覚しているからです。公職にある者が特定の企業などに便宜を図るということは、近代民主主義国家では許されないからです。
 ただし、中世社会となるとやや様相が変わります。贈答は盛んに行われるのです。例えば、ある荘園に国役という税が臨時に賦課されるとします。庄民は荘園領主に訴えて、これを免除してくれるよう働きかけを依頼(訴)します。そして、具体的には酒手と称して守護などに銭を渡します。こうして免除を勝ち取るのです。これはオープンであり通念化しています。社会状況があまりに違いすぎるので善悪の判断は止しましょう。ただし、はっきりしていることは給付に対しては反対給付が必ず在るということです。それが贈答なのです。これは身分上下を越えています。したがって、この約束・礼を違えることは許されないのです。
 菅浦(当所)より竹生島に年貢を納めるようになった由来は、暦応年間に、日差・諸河の田地を隣の大浦庄と争ったときに、竹生島の雑掌(年貢の役人)が京都まで出かけて、訴訟に尽力してくれたから、7石5斗の年貢を納めるようになった。ところが、今度文安二年の訴訟では、催促しても京都へ出向いてくれなかった。そして、訴訟はけりが付いたが、そういう状況なので、年貢を納めるかどうかは、菅浦側が勝手に決める権利がある、というものです。中世社会は言わずと知れた身分制の社会です。庄の住民が対等ではない領主(竹生島は比叡山の末寺で菅浦領主)を相手に、全く合理的な明快な態度をとっています。年貢と雖も領主が領主らしい役割を果たさないと、納めないという姿勢が窺えます。
(社会システム学科 蔵持重裕)

きららむし(五)
異称月

 古文書のなかで、とりわけ書簡や文学関係のものを読んでいるうち、ときどき知らない月の名前に出くわすことがあります。江戸時代の閏月の場合は、たとえば「閏四月」とか「後四月」のように記しますし、閏月があった年かどうかは歴史年表を見ればすぐに分かりますから、これらについては問題ありません。
 しかし、「得鳥羽月」とか「龍潜月」となると、一体何月のことなのか見当をつけるのが大変です。このような例は滅多にお目に懸かるものではありませんが、これらのものを「異称月」と呼び慣わしています。身近な例では、睦月・如月・弥生・卯月・皐月・水無月・文月・葉月・長月・神無月・霜月・師走がありますが、これらは皆さんも高校時代の古文や現代国語の授業で習ったことと思います。歴史を学ぶうえでも、これらの異称月名については読み方とともに記憶しておく必要があります。
 ただ、たとえ歴史学や国文学を専攻しないとはいえ、大学生ともなれば、これ以外の異称月名についても新しい知識として身につければ、これから私信を認めるさいにも、少し新しい気分になれるのではないでしょうか。以下に、各月について三つずつ紹介しておきましょう。早速、ご家族・友人・恋人にロマンチックな異称で手紙を送ってあげて下さい。もっとたくさん知りたい方は、史料館や図書館に備えてある文献をご参照下さい。
 これらはいずれも太陰暦に基づいていますから、季節感としては一月ほど異なりますが、言い得て妙な称月だと思いませんか。ちなみに、先ほどの「得鳥羽月」は四月、「龍潜月」は十一月の異称です。
正月(嘉月、初春月、青陽)
二月(麗月、梅見月、恵風)
三月(桜月、夢見月、花飛)
四月(余月、花残月、麦秋)
五月(橘月、浴蘭月、薫風)
六月(焦月、鳴雷月、炎陽)
七月(桐月、愛逢月、流火)
八月(桂月、燕去月、竹春)
九月(菊月、紅葉月、霜辰)
十月(陽月、鎮祭月、小春)
十一月(葭月、雪待月、天泉)
十二月(極月、春待月、暮節)
(企業経営学科 宇佐美英機)