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吉川学長挨拶

医療経済研究会に寄せて : 『安心の価格は?』

滋賀医科大学長 吉川隆一
狂牛病をめぐる日米両政府の取り扱いの相違が話題となっている。日本では食肉に供される牛は全て検査の対象とする、いわゆる全頭検査方式であり、「安心」を保障するやり方である。これに対し、米国は数万頭に一頭といった抽出検査で科学的に十分食肉の安全が保障されているとの見解であり、検査には必ず間違いが起こりえるので、安全性確保の観点からは抽出検査で全頭検査並みの安全性が確保されていると主張しているようである。従って、これまで狂牛病の検査を受けた牛の数は両国間で恐らく100倍以上の差が在るものと思われる。当然、両国が支払っている費用にもそれだけの差が生じていることになる。この費用は誰が払っているのであろうか? 吉川隆一学長
医療の現場ではいわゆる医療事故が多発しており、医療への国民の信頼性がゆらいでいる。医療現場での危機管理体制を整備することを求める声が高まりつつある。医療の大半は人的なサービス業務であり、人が行う医療行為の現場でミスが起こらないとは保障し難い。無論、医療者サイドでもミスの頻度を限りなく少なくするため、医療行為の各行程にダブルチェック体制を敷き、危機管理の専門家を採用する等の努力を行っている。国民の安心を取り戻す努力であるが、当然ながら費用がかかる。この費用は誰が払うべきなのだろうか?薬の副作用も多くの医療事故の原因となっている。残念ながら、副作用がどの人に生じるかを前もって知ることは現時点では困難であるが、まもなく遺伝子解析技術によって可能になるだろう。ただしその検査には余分な費用が必要となる。安心して薬が飲めるようになるわけだが、その費用は誰が払うのだろうか? 医は仁術か、算術か、といった論争の時代は既に過去のものである。医療の経済性を客観的、科学的に評価する時代をむかえているのではないかと思っている。更に、病気の治療のための費用と病気の予防のための費用の費用対効果の解析、即ち健康保持の経済性についても議論が深まるような研究会となって頂ければと期待している。

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