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《ものひと地域研究会》みらいの漆・うるしの未来

堤 卓也 (株)堤淺吉漆店専務取締役

 経済学部ワークショップ「ものひと地域研究会」の今年度第1回のワークショップは、京都の堤淺吉漆店(創業明治42年)の堤卓也さんにお話をうかがった。

 まずは、多くの学生にとってもはや身近な存在ではない漆について、その歴史から使用法、特徴などについて丁寧に解説いただいた。概略は以下の通りである。漆は日本では縄文時代(1万年前)から使われていて、かぶれることがあるので強いイメージがあるかもしれないが、とても弱い木で人の手がないと枯れてしまう。日本の場合、10−15年育てて漆の樹液を採取し、伐採する。1本の木から取れる漆の量はおよそ200グラムである。漆は、塗料だけでなく、金箔を貼り付けたり、割れた陶器の補修の際の接着剤(金継ぎ)、鉄製品のサビ止めなど、多様な使われ方をしている。 また、麻布と漆で構造体を作る乾漆という技法がある。レーシングカーなどに用いられているFRPと同様の技術であり、100キロの人が座っても壊れないスツールなどを試作されている。うるしの硬度は4Hで、通常の自動車などのウレタン塗装膜より硬い。酸やアルカリにも強い。弱点は紫外線であるが、逆に分解して環境に戻る点は、マイクロプラスチックのような環境問題を引き起こさないという利点でもある。漆の消費量は1978年に500トンだったものが、2018年には46トン、2019年には36トンまで減ってきている。現在日本で使われている漆の98%は中国からの輸入であり、日本での生産量はわずか1.8トン(2019年)である。

 お話の後半は、今まさに風前の灯火のようになっている漆の現状に対する堤さんの取り組みであった。堤さんは「うるしのいっぽ」というプロジェクトを立ち上げて、漆について知ってもらい、国産漆を守る活動に取り組んでいる。例えば、自転車やスケートボードなどに漆を施して、それを映像に撮るなどして情報発信をしている。また、オーストラリアの木製ボードシェイパー Tom Wegener氏の作ったサーフボードに漆を塗るなどもしている。こうした活動は単に漆についての情報発信にとどまらず、環境問題に対するライフスタイルの提案までつながっている。

 新型コロナウィルス問題のためオンラインによる講演会であったが、堤さんは工房の中を生中継で紹介してくれるなど、オンラインならではの強みを活かした新しい形の講演会になり、講演会後のアンケートでもとても好評であった。

(中野 桂)

講演会の様子
講演会の様子
講演会の様子
講演会の様子

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