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《ワークショップReD》中田、髙村編『復興に抗する』を読む

髙村竜平 氏

中田英樹 氏

 『復興に抗する――地域開発の経験と東日本大震災後の日本』の著者である中田英樹氏と高村竜平氏を招いて、この著書をまとめる過程でとくに重視した点や調査先のその後の様子、公刊された後の関係地域の反響などについて話を聞いて、参加者と意見交換を行った。まずこの著書を出版した有志舎代表の永滝氏が本づくりに賭ける意気込みについて少し触れておきたい。同氏は一般読者に学問を広めるためにとにかく読んでもらう本づくりを手掛けている。そのため、アカデミズムの作法に則った叙述を避け、同時に歴史を踏まえた記述にし、論文の束ではなく全体としてテーマがつながるようにとの要望を著書に出した。その要望が実現した本になっている。

 本の構成は次のとおりで、生産、消費、廃棄の順に話が展開する。序章地域固有の生活史から描く開発・被災・復興(高村竜平・猪瀬浩平)、第1章ここはここのやり方しかない――陸前高田市「広田湾問題」をめぐる人びとの記憶(友澤悠季)、第2章原発推進か、反対かではない選択――高知県窪川におけるほ場整備事業から考える(猪瀬浩平)、第3章福島復興に従事する地元青年にとっての故郷再生(中田英樹)、第4章「風評被害」の加害者たち(原山浩介)、第5章被災地ならざる被災地――秋田県大館市・小坂町の三・一一(高村竜平)、第6章中心のなかの辺境――埼玉県越谷市の三・一一(猪瀬浩平)、終章「復興に抗する」経験を生きる(中田英樹)。いずれの章もⅠ国家と土地、Ⅱ国家と労働、Ⅲ労働と資本、Ⅳ国家資本主義といった点から論じており、例えば第3章では豊饒の地であった福島県の農地を被災後地元青年が土壌スクリーニングという環境への働きかけを通して再生させようとする行動を軸に、プロセスとしての故郷の創出、人間と環境への働きかけ、土地を国家の領土として再度領有し、国家システムのなかへと包摂していく過程を論じている。それらはこの著書のなかでは主に東北を例としているが、海外の事例も同様の観点から論じられるという意見がフロアから出た。

 また著書から離れて戦後開拓の地となった岩手の開拓村の事例を挙げて、無霜期が100日に満たない農業に不向きな土地で林業をするなか、入村者らが開拓地を再整備し農地の集積化を図り大規模農業を営むように変化させたその姿はJ. Scottのモラル・エコノミーを思い起こさせる営為であったとの話がでた。これに関して地域開発を当事者がいかに経験し、それをどのように自分たちの流儀で組み替えて行ったのかについての議論も行った。さらに公刊後、高村氏は著書で取り上げた秋田県小坂町に招かれて地元の人たちと意見交換をする機会が設けられたこと、そしてそれにまつわる後日談を聞くことができた。

(福浦厚子)

講演会の様子
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