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《ワークショップReD》「書評 横井香織『帝国日本のアジア認識-統治下台湾における調査と人材育成』岩田書院、2018年」ほか2報告

阿部安成(本学部教授)

今井綾乃(本学大学院経済学研究科博士後期課程)

横井香織(寧波大学(中華人民共和国)外教)

 阿部安成報告(「横井香織『帝国日本のアジア認識―統治下台湾における調査と人材育成』(岩田書院、2018年)を読む」)は横井の著書の書評で、同書は、第2章図2-3「台湾総督官房調査課と島内諸機関・団体との相関関係」と題された機構図を提示し得たことにより、調査と教育という技術をとおして、南支(対岸)-台湾-南洋を連結する、情報とひとの通行を、史料にもとづいた実証によって解明し、また、台湾総督府高等商業学校=台北高等商業学校の具体相をていねいな調査によって得られた史料にもとづいて記述し、外地における台湾という帝国日本の最前線(植民地)を軸とした南支-南洋という地域をめぐる官-民諸機関の実務や実業や実地調査についての展開をとらえた基本文献となると評価した。

 今井綾乃報告(「彦根高等商業学校生の手書き論文群目録―国立大学法人が保有する官立高等商業学校生の手書き論文をめぐって」)は、滋賀大学経済経営研究所が保管する旧制官立彦根高等商業学校生徒が執筆した原稿がなにであるのか、を明らかにした。同所では大別すると2つの生徒執筆原稿群があり、そのうちの1群(総数646点)について今井は、ほかの旧制官立高等商業学校を母体とする経済学系学部のある国立大学法人での同様の史料をめぐる保存、公開、活用のようすをみすえて、対象とした史料群を、彦根高等商業学校の制度(学科課程と論文募集)、同校規程による論文種別、開講学科目と結びつけて、そのほとんどが正課における課題についての提出原稿だととらえた。

 横井香織報告(「近代日本の華僑・華人調査1―台湾グループの華僑・華人観の変遷」)は、前記自著で充分には明らかにできなかった「アジア認識」についての議論を深めるための第一段階とみずから位置づけ、台湾総督官房調査課の華僑調査が、「1935年頃まで、外部機関の調査報告書や植民地政府の調査報告の翻訳を活用して進められた」こと、「特に台湾銀行、華南銀行の調査は、実地調査を実施して華僑の送金システムや南洋の金融状況に関する情報を収集し、日本の銀行が南洋に進出し、いかに華僑送金網に関わるか、その手段や方法を示した」とのべた。

 今回のワークショップでは、歴史資料(史料)の活用法がひとつの論点として示され、それは、使途理由のあった文書が使用済み後にいったんただの「モノ」(今井)となり、それが別の目的で当時の資料として活用され、それがまた「モノ」として忘れられ、それを現在、歴史をめぐる史料として、わたしたちが活用するときの、整理や保存や公開をめぐる議論や、「調査報告書」(横井)という文献を、かつての流通機構に差し戻したうえであらためて史料として活用することをめぐる議論となった。

(本学部教員 阿部安成)

講演会の様子
講演会の様子

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