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フランチャイズ契約におけるロイヤリティ構造

山下 悠 講師

講演会の様子

 社団法人日本フランチャイズチェーン協会などの定義に従えば、フランチャ イズ・システムは(1)資本的に独立した2つの事業者である本部と加盟店の間の契約関係で あり、(2)本部は加盟店に対してノウハウを提供するなどして対象となる事業について指導 ・援助を行い、(3)加盟店は本部に対価を支払い、事業を行う継続的関係である。私がこれ までに行ってきたフランチャイズ・システムに関する研究は、上に挙げた(1)と(3)に関 する研究が主である。
 (1)について簡単に述べておくと、フランチャイズ・システムと言っても全ての店舗をフラ ンチャイズ店舗として展開しているわけではなく、本部から雇用された社員が店長として経営 を行っている直営の店舗が存在している。すなわち、新しい店舗を作る際にその店舗を直営店 として開設するのか、フランチャイズ店舗としてオーナーを募るのかの意思決定の問題がある。 理論的な分析によって、本部と店舗の間に発生するモラルハザードを防ぐためにフランチャイ ズ契約を締結するということが明らかになっている。この結論について実証的に検証を行う研 究も欧米および日本で行われている。
 本報告では、主に(3)に関する私の研究を報告した。すなわち、フランチャイズ・システ ムの特徴とされる、加盟店が自らの売上高または粗利益の一部をロイヤリティとして本部に支 払う制度について、それを導入する必要性に関する理論的な分析をレビューするとともに、得 られた理論命題について実証的な検証を行っている。具体的には、本部が加盟店の行動をモニ タリングできず、さらに、加盟店も本部の行動をモニタリングできない「二重のモラルハザー ド」が発生する状況では、ロイヤリティを導入することが必要であることが理論的に明らかに なっている。また、加盟店が販売する商品の需要に関して不確実性が発生する場合には、需要 の変動に合わせて決定されるロイヤリティを本部が受け取る契約を採用し、本部と加盟店が需 要の変動に伴うリスクを分担する必要があると分析している。私の研究は、「二重のモラルハ ザード」が発生する場合にはロイヤリティを伴うフランチャイズ契約が採用される傾向がある ことを実証した初めての研究である。
 
 

(山下 悠)

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