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パプアニューギニアにおける言語調査とその魅力

野瀬昌彦 准教授

講演会の様子

 本報告では、私がフィールドとしているパプアニューギニアでの調査について、 主として言語学的な成果と今後の構想を述べました。とりわけ、私が調査対象としている現地語 のアメレ語とアメレのコミュニティの実情と問題点を取り上げました。

 南太平洋のメラネシア地域にニューギニア島があり、ニューギニア島の西半分がインドネシア領 のイリヤン=ジャヤ、東半分と周辺の諸島がパプアニューギニアになります。パプアニューギニ アには、現代的な生活をしている人々がいる一方で、水道や電気のない、伝統的な生活様式で暮 らす人々が多くいます。また、「ワントク・システム」と呼ばれる縁故に基づく社会システムが 存在し、そしてそのシステムから逸脱した者が町に出て盗賊になるなど、社会変化や治安の悪化 という状況があります。
 ニューギニア島及び周辺地域は1000以上もの言語が話される言語の楽園と呼ばれています。それ らの言語は、大きく分類して3グループ存在します。ひとつめは3万年から5万年前に到達した人類 を基盤とするパプア系またはニューギニア系と呼ばれるグループ、ふたつめは5千年から7千年前 にカヌー等で到達したと考えられるオーストロネシア系のグループ、みっつめは、19世紀後半以 降に発達したとされる共通言語(リンガ・フランカ)であるトクピシンやインドネシア語です。 とりわけ、パプアニューギニアで広く話されるトクピシンはクレオールと呼ばれ、英語ベースの 語彙を用いた新しい言語であり、最近は言語の起源の問題とも関連した研究対象となっています。
 私は、パプアニューギニアの現地語アメレ語及びトクピシンの言語調査を2006年から実施してい ます。現在までの調査で明らかになっている点と調査上の苦労や魅力を述べました。アメレ語は ニューギニア系の言語であり、その文法構造は日本語や英語のものとは大きく異なります。 研究のポイントとしては、アメレ語の文法をより深いレベルで記述することと共に、彼らが現 代社会とどのように折り合い、社会と言語が密接に結び付く様を、言語学及び人類学的な点から 観察することです。 
 
 

(野瀬昌彦)

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