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激動の東アジア情勢と日本

西岡 力 (麗澤大学客員教授)

 演者の西岡力氏は、北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会・会長として拉致問題の解決に永年先頭に立ってその解決に向けて尽力される一方、「従軍慰安婦問題」については早くから現場の生き証人に向き合い客観的史資料に基づいて「慰安婦性奴隷説」を全面的に否定され(『日韓誤解の深淵』亜紀書房、1992年)、近年政治問題化している「徴用工」問題についても、その実態はほとんどが「強制連行」ではなく募集・斡旋された労働者であり、労働現場も概して良好なものであったこと、また今回の韓国側の判決が、いわゆる「徴用工」への未払い賃金等に対する「個人請求権」云々の主張ではなく、日本の朝鮮統治そのものの不当論を論拠にした慰謝料請求である点を明確にし、それは1965年締結の日韓基本条約と日韓請求権協定を覆すものであり、しかもこうした国際法に基づく日韓関係を根底から否定する論法が、日本国内の親北・反韓・反日勢力によって長年にわたって準備されてきたものであることを明らかにされてきた(同氏『でっちあげの徴用工問題』草思社、2019年)。

 今回の氏の講演は、社会主義・共産主義の悲惨な現実を知った氏自身の韓国留学体験から説き起こされ、韓国では65年の国交正常化から79年の朴正熙大統領の死去までは、日韓の保守は中ソ北朝鮮を共通の敵とする反共意識を共有していたが、82年の全斗煥政権以降韓国では、日本からの経済協力を得たり政権維持のためという「功利的反日」が歴史問題を題材にして繰り返されるようになった。

 その背景には、80年代以降韓国内に急速に拡散していった「反韓国史観」があり、それは、韓国は日本統治時代に協力した親日派が処分されずにその後裔が支配層に君臨し続ける汚れた国であり、北朝鮮こそ武装独立闘争をした金日成が、親日派を全面的に処断した民族の正当性を持つと国であるいう歴史観である。さらに91年のソ連崩壊以後マルクス主義の正当性が崩れる間隙を縫って、日韓の左派が「従軍慰安婦問題」等の歴史問題を仕掛けて、民族の敵としての「親日」批判=反日が高唱されてきた。

 しかし、現在の左派・文在寅政権の反日は、これまでの保守政権の功利的反日ではなく北朝鮮と結びついて社会主義への転換を目指すものであり、このままでは自由主義国家の崩壊に至ると危機意識を持つ保守派が、客観的史実に基づいて「従軍慰安婦」や「徴用工」問題の真実を堂々と解明して反・反日を主張し(李栄薫『反日種族主義』文芸春秋、2019年)、今や同じ反共自由主義を唱える日本をはじめとする東アジアの勢力との連帯が進んでいることを明らかにされた。

 こうした西岡氏の長年にわたる実践と研究に裏打ちされた講演は、圧倒的な説得力をもって参集した多くの聴衆の心を打った。 参加者約200名。

(文責 筒井正夫)

講演会の様子
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