にしゃんた(羽衣国際大学現代社会学部教授)
今回の講演会は、今年度はじめて開催した「滋賀大学サステナウィーク」(11月25日〜29日)の一つのイベントとして開催した。
オープニングは、やや緊張した空気の中で始まったが、にしゃんたさんの話術に、徐々に聴衆は引き込まれていった。
スリランカ生まれのにしゃんたさんは高校生の時に大津市坂本にホームステイし、その後再来日して、大津市の雄琴温泉で布団敷きのアルバイトをしながら語学学校に通うなど、滋賀県に縁がある。講演の冒頭は、日本における、そうしたご自身の体験の中で感じた文化の違いについてお話いただいた。
そして中盤からは、「違いはある」という前提に立つ時に、我々はどのような対応をすべきかについて、ケース別(象限)に分けて説明してくださった。ケースは、「変化する・しない」という軸と、「受け入れる・受け入れない」という軸によって以下の4つに分類される。
「変化せず、受け入れもしない」というのは「排斥」であり、「(相手を)変化させるが、受け入れない」のは「同化」、「(お互いに)変化しないが、受け入れる」のは「棲み分け」となる。
最後に残される組み合わせは、「変化し、受け入れる」という選択である。通常これは「共生」などと呼ばれるが、「同化」や「棲み分け」も含んで「共生」と呼ばれることもあるので、にしゃんたさんはこの最後の組み合わせを「共笑」と呼んでいるという
フロアからのディスカッションでは、「この最後の組み合わせは『戦争』になるのではないか」「自身の経験から自分は『排斥』の立場である。相手が変化しようと思わないのに、こちらからあえて受け入れようとしなければならないのか」などの意見も出された。
確かに、「変化し、受け入れる」というのは決して易しいことではない。距離が近くなればなるほど、些細な違いが目についてしまったり、争いになったりすることはよくあることである。
一方で、好むと好まざるとにかかわらず、交通網や通信網の発達により、人の往来も情報・文化の往来も激しくなり、困難はあっても「違いを認め、受け入れる」しか選択肢はなくなってきているようにも感じる。
共に笑える社会の構築という「理想」に向かっていくという今回のにしゃんたさんからのメッセージは、サステナウィークの最終日を飾るにふさわしいものであった。
(中野 桂)