経済学部

TOP経済経営研究所(ebr)講演会・研究会経済学部講演会 ≫ 地域の持続可能性と金融機関

地域の持続可能性と金融機関

吉原 毅 (城南信用金庫顧問)

 毎年、「環境問題を学ぶ」という教養科目の授業に、ゲストスピーカーをお招きしているが、今回は城南信用金庫顧問の吉原毅氏にお越しいただいて、「地域の持続可能性と金融機関」というテーマでお話をしていただいた。

 お話は貨幣の歴史から始まり、アダム・スミスの「国富論」やカール・ポランニーの「大転換」を経由して、株式会社論、南海バブル(泡沫)事件、グローバリゼーションと軍需産業・エネルギー産業の関係に至るまで、縦横に展開された。

 その多岐にわたるお話のエッセンスを抜き出すとすれば、①近代社会はお金とのバランスを失ってしまった、②その一つの装置となったのが株式会社である、③第一次グローバリゼーション時代には株式会社を使って遠隔地からお金を集める帝国主義が跋扈した、④グローバリゼーションは富の集中によって格差を生み、不況を生む、⑤その不況下においてさらに金を儲けるために利用されたのが戦争(軍需産業)であり、石油開発や原発(エネルギー産業)である、⑥すなわち、平和を希求し、かつ人を大切にするならば、グローバリゼーションに抗い、コミュニティの中で健全なお金の流れを作ること、⑦エネルギー問題でいえば、原発をやめ、例えば、農地の上で太陽光発電を行うソーラー・シェアリング技術を導入し、大企業ではなく、地方に暮らす個人が収入を得て、地球温暖化・耕作放棄地・後継者不足・過疎化などの課題を同時に解決することができるかもしれない、ということになろうか。

 次々に飛び出す歴史的出来事や人名、さらにさまざまな経済統計数字や原発に関わる耐震強度や放射能の数値データなどには、圧倒された。

 2011年に東日本大震災が起こり、東京電力福島第一原発が未曾有の原子力事故を起こしたが、それは吉原氏が城南信用金庫の理事長に就任してから間もない頃であった。吉原氏は、城南信用金庫の設立当初の基本的な理念(ただ公益事業に尽くして、地域住民の福祉の向上をはかることを目的とする)に立ち返り、お金による弊害を是正して、人々が中心となり、人が大切にされる経営を目指していた。原発に反対するのも、この理念に照らし合わせれば、当然のことであると思われたという。

 金融機関に限らず、すべての企業がこの理念に沿って経営をするならば、サスティナブルな社会の構築もさほど難しいものではないのかもしれない。

(中野 桂)

講演会の様子
講演会の様子
講演会の様子
講演会の様子

経済学部講演会・研究会のページへ