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廃天ぷら油で地球一周と東日本大震災~宇宙船地球号の行く先は~

山田周生(写真家、フォトジャーナリスト、バイオディーゼルアドベンチャー代表、一般社団法人ユナイテッドグリーン代表)

 山田周生氏を一言で語り尽くすことはできない。講演会の冒頭で通常は肩書きを紹介するが、山田氏の場合、冒険家、写真家、社会事業家などいくつあっても足りない。

 25歳の時にバイクでサハラ砂漠を単独横断したのを皮切りに、パリダカール・ラリー、キャメル・トロフィー、アドベンチャーレース、犬ぞりレースなどに参加し、これまでの総走行距離は地球70周。「周生」の名前の通り、地球を周りながら生きている。サハラ砂漠は大好きすぎて、結局これまで30回も行ったという。それも途中からは、ヘルメットをかぶりプロテクターをつけたまま寝るという方法を思いつき、テントもシュラフも持たないらしい。

 2007年からは廃食油をディーゼル燃料に変える小型プラントを搭載した車で世界一周をする旅にチャレンジ。約一年かけて世界を回ったのちに、さらに日本一周に挑戦。2011年、途中の岩手県で東日本大震災に遭遇し、そのまま現地の復興支援に携わり、現在に至る。

 ガソリンではなく廃食油があればどこでも走れ、さらに砂漠横断用に予備タンクをたくさん搭載した山田氏の車は、震災後、物資の輸送などに大活躍したという。支援物資の受け入れやボランティアスタッフの受け入れに尽力し、自立して支援を続けることのできるエコハウスを作り、活動拠点としている。世界を旅する中で、多くの人に助けられた思いを、今は東北の地で生かしている。

 「どうしてそんなに苦しいことをするのですか」と問われると、逆に「どうしてこんなに楽しいことをしないのか」と不思議に思うという。どんな困難にあっても「最悪、死ぬだけ」という発想も、驚きを超えて清々しくすらある。

 極限をいくつも楽しみ超えて、その穏やかな佇まいはもはや大阿闍梨の如し。数々の東北被災地での支援活動。その根底にある、生への向かい方、考え方。山田氏のお話を伺いながら、彼こそ真のイノベーター(革新者)だと思ったし、幾多の冒険の中で彼を死なせなかった創造主の意志すら感じた。

(経済学部教授 中野 桂)

講演会の様子
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