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戦場からの生還者たちの思い『鎮魂硫黄島―戦後70年語り継ぐ兵士の言葉』上映とドキュメンタリー作家の視点

伴野智氏((株)東北新社映像制作事業部チーフプロデューサー)

 戦後70年となる2015年、硫黄島で戦った日米元兵士らがどういう思いでいるのかについてまとめたドキュメンタリーをまず観た。「日米は和解したのか、戦争は終わったのか、いつどのようにして戦争は終わったと言えるのか」を問う。

 元米兵の証言では当時硫黄島は戦略上、心理上重要な場所。そこが東京都であったため、占領すれば日本人にとって本土上陸も同然。心理的に圧倒できると見込んだ。師団長栗林中将は地下陣地を作り応戦する戦略を立てた。硫黄島は火山島で地熱があり地下壕は40度を超え、水や食料、弾薬の補給が途絶した壕内での1か月に及ぶ防戦は苛烈を極めた。

 1985年、戦後40年を期して日米元兵士が再会。戦績を挙げ名誉勲章を授与されたある元米兵は多くの日本兵を殺害したことの罪悪感から参加できなかった。戦後70年が過ぎようやく参加した。生き残った元日本兵の一人は「今日の平和は戦場の無数の死により贖われていることに気付いてほしい」と語った。

 映画上映後、映像作家として伴野氏から「ドキュメンタリー制作、取材を通して思ったこと」について話していただいた。テレビ放映を前提に制作したものとして一定時間枠のなかで「何を伝えて何を捨てるのか」が課題の一つであった。インタビューは「日米は和解したのか」を問うものであるが、整然と答えが出る性質のものではない。ドキュメンタリストとして悩み、問いと答えを簡単に提示するテレビの様式がもつ課題も指摘。またドキュメンタリーがもつもう一つのテーマ、つまり隠されたメッセージ(「日米は和解したが、戦争の傷は深く残っている」)をまとめる難しさもあった。単に戦争体験者に聞くだけでなく、同じ戦いをした元兵士を日米双方から聞き取り、映像にした。同じ問いでも返答は日米でかなり異なった。例えば、「何のための戦争か」の問いには、元日本兵は「命令だから仕方がない」、元米兵は「正義のため、自由のため」と述べた。「戦争における捕虜とは」には元日本兵は「死と同義」、元米兵「捕虜になるまで戦ったから名誉だ」、「戦争での名誉とは」には元日本兵「戦死」、元米兵「役目を果たし、生きて帰ってくること」と述べた。

 硫黄島の戦いは双方にとって激戦であったため、生還者は大きな心的外傷を負っている。また、生還したことや加害への罪悪感も強く、この3つは日米元兵士ともに持っている。しかし、自尊心の喪失は元日本兵側にのみ存在することがわかった。硫黄島日米合同慰霊祭に元日本兵が参加を予定していたが、日本側関係者は拒否した。紆余曲折を経て最終的には参加できたが、この一件は兵士が生きて帰ることの根底を否定する出来事でもあり、戦争が投げかける影が延々と続いていることに気づかせた。伴野氏はドキュメンタリーを通して歴史を考え、そこから現実社会の課題解決の糸口を見つける素養を培ってもらいたいとまとめた。

(経済学部教授 福浦厚子)

講演会の様子
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