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原子力事故から学ぶべきこと

七沢 潔(NHK放送文化研究所)
コメンテーター 井戸謙一(弁護士)

 今回は、『原発事故を問う―チェルノブイリから、もんじゅへ』などの著書や「ネットワークでつくる放射線汚染地図」などのドキュメンタリーを制作してこられたNHK放送文化研究所の七沢潔氏に、一連の原子力事故から我々が学ぶべきことについて、まずはお話をいただいた。

 実は七沢氏には、2010年12月にも本学において「原子力事故から何を学ぶか」というタイトルで講演をしていただいている。東京電力福島第一原発の事故は、それから約3ヶ月のちに起こったが、七沢氏は今回の講演の冒頭でもそのことに触れ、前回の講演から約8年経っても同じようなタイトルで話をしなければならない現状についての複雑な気持ちを述べておられた。

 講義では、東京電力の当時の幹部に対する刑事裁判を傍聴する中で、徐々に明らかにされてきていることなどを話され、いまだに事故などがなかったような「隠ぺい」が行われていることを説明された。

 その上で、「情報」「分断」「究明」の三つをキーワードに、ジャーナリストを含む市民の行動によって、真実を明らかにし、闘いを継続することによってのみ、我々は未来を切り開いていくことができるのであるということを話された。

 後半の20分では、彦根在住の弁護士・井戸謙一氏に原発をめぐる現状と運転差し止めなどの司法における状況をお話しいただいた。特に印象的だったのは、技術論的には運転差し止めを求める原告住民側の論理が徐々に卓越してきているのにもかかわらず、裁判所側が実質的統治行為論に陥り判断を避けたり、あるいは社会的通念という概念に逃げ込むケースが増えてきているということであった。

 お二方の話に共通するのは、福島における原発事故がマスメディアや司法の場でも風化しつつあるという現状指摘であるが、同時に、市民の側としては、被害の全貌を明らかにするための運動あるいは闘いの継続が必要であるという訴えであったと思う。

 現在20歳の学生は当時12~13歳であり、事故の記憶すら既に曖昧であるかもしれない。原発事故は大きなものに限っても10年ごとぐらいには発生しており、今日という日が「事故前」とならないように、原発事故を語り継ぎ、そしてまた学ぶことを今後も継続していきたいと感じた。

文責:中野桂

講演会の様子
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