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沖縄サクセション

青柳周一 (本学経済学部附属史料館長)
戸邉秀明 (東京経済大学准教授)
阿部安成 (本学経済学部教授)

講演会の様子

2016年度の滋賀大学経済学部フォーラムは、経済学部ワークショップReDの活動を核としたその拡大版として催された。 フォーラムは、第Ⅰ部が滋賀大学経済学部附属史料館2016年度春季展示 「琉球貿易図屏風と琉球使節の「江戸上り」」のギャラリートーク(経済学部附属史料館館長青柳周一)、 第Ⅱ部で、長編ドキュメンタリー『沖縄 うりずんの雨』(ジャン・ユンカーマン監督、シグロ、2015年)の上映、 第Ⅲ部は上記ドキュメンタリーへのコメント(東京経済大学経済学部准教授戸邉秀明)、 そして第Ⅳ部でディスカッションの4部構成とした。

 第Ⅰ部のギャラリートークでは同館が所蔵する「琉球貿易図屏風」に描かれているものが述べられ、 そして琉球使節の「江戸上り」のさいに近江をとおったときのようすが、地方文書をもちいてあらわされ、 朝鮮通信使との違いも説かれた。本展示は、1帖の屏風に始まって、それをいま見ている地域と琉球とのかつてのかかわりへ、 さらに琉球から18世紀の東アジアを見渡すところへと、みぢかな場から雄大な展望へと観覧者の視野をひろげる、 とてもおもしろい組み立てになっていた。

ドキュメンタリー映像は、2時間28分もの長編。第1部「沖縄戦」、第2部「占領」、第3部「凌辱」、第4部「明日へ」。 それぞれの部で、主題となった出来事、思索、活動、表現の当事者たちが語る「証言」や談話でドキュメンタリーが構成され、 現在の映像、過去の映像によってそれらの現場が見せられてゆく。第1部がもっとも長く、第4部がいちばん短かった。 「明日へ」を短く編集したところに、なにがあらわれているか。上映時には27名が出席していた。

戸邉さんのコメントは、このドキュメンタリーを、軍隊が人間を壊してゆく、そうした壊れた経験を、 自分で見続け、しかし壊れ切ることがなかったひとたちが語る記録ととらえ、たんなる米兵の告発や米軍への批判にとどまらない、 軍隊そのものを問い、沖縄の映画に終わらない作品となったと説いた。とても的確なコメントで、彼がそうとらえて見せたことで、 見終わったドキュメンタリーをふりかえるわたしたちの視覚が磨(と)がれたように感じた。

ディスカッションの内容を2点だけとりあげよう。1つは、沖縄独立をめぐる議論。 より地方自治を徹底させるとの意見に展望が開かれたおもいがした。もう1つは、 先生たちの話がよくわからないという発言を始まりとした議論。これには的外れというところと、 ここを端緒とするところとの、二様が入り混じっているとわたしはうけとめた。ついわたしたちはむつかしい言葉を使う。 しかし、物事はそうかんたんには組みたてられていない。だからわたしたちは、ひきつづき「記録」をめぐる思索をしてゆこうとおもう。

(阿部安成)

講演会の様子
講演会の様子

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