|
滋賀大学経済学部リスク研究センター客員研究員)
『Public Debt and Economic Growth in an Aging Japan』
日時: 平成17年6月30日(木)13:00~14:30論文概要: わが国の膨大な財政赤字累増とそれにかかわる将来負担(税)や将来の急速な高齢化による公的年金と公的医療保険の財政問題は、深刻でかつ解決が急がれる問題である。一般的に認知されているこの社会的な問題に対して、昨年末の米国NBERに発表されたある学術的論文を契機に、専門研究者の間では大きな議論が再び起こっている。このNBERに発表された論文は日本の将来財政の危機的状況は起こらないと結論付けており、学術的にも政治経済的にも重要な意味を持つ。小泉政権下では財政再建がおおきな政治的スローガンにもなっているが、将来の財政破綻がまったく問題視する必要がないものであれば、財政再建を議論することすら意味がない。この新しい問題提起は日本に国際的立場からさらに財政負担を求める米国にとってはきわめて好都合であろう。日本国内のみにおいても、この新しい問題提起は重要である。内閣府や経済諮問会議における比較的楽観論に対して財務省はきわめて慎重であり、学術的レベルにおける決着は将来のわが国の財政運営にも大きく影響を与えるものである。本稿は純粋に経済学的な分析手法に基づいてこの問題の再提起に答えを与えるものである。すなわち、NBERに発表されたきわめて楽観論に対して、本稿では悲観的な結論を提起する。将来の急速な高齢化と累増している膨大な財政赤字のために、2050年には租税負担率と社会保障負担率をあわせた国民負担率はこのままの政策を維持すれば約80%近くに膨れ上がる。すなわち、早急に財政再建に乗り出さなければ近い将来に財政破綻と国債暴落の危険性が示唆される。一方、2004年の公的年金制度改革の効果も吟味され、年金改革がある程度負担を軽減することも示される。また、高齢化に伴って国民医療費が将来も趨勢的に増加することは避けられない点も示される予定である。一石を投じることによって、昨年末から大きな議論が再燃している財政赤字と将来負担の問題に対して、慎重な再考を促すことが本稿の一つの大きな目的でもある。
会場: 滋賀大学経済学部 第二校舎棟5階545共同研究室
主催:滋賀大学経済学部附属リスク研究センター
TEL:0749-27-1404(内線396) FAX:0749-27-1189
e-mail address:risk@biwako.shiga-u.ac.jp
リスク研究センターホームページへ