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20190530農業経済学セミナーを開催いたしました。

  •  日 時:令和元年5月30日(木)16:10~17:40
  •  会 場:セミナー室1(滋賀大学彦根キャンパス士魂商才館3F)
  •  分 野:農業経済学セミナー
  •  表 題:Building farmers' resilience for food and nutrition security in Zambia-
         ザンビアにおける食料と栄養の安全保障のためのレジリアンス構築
  •  講演言語:日本語
  •  講 師:梅津 千恵子 氏(京都大学大学院農学研究科 教授) ☚クリックすると経歴が御覧いただけます。
  •  招聘担当:松下京平 准教授
  •  20180530ポスター.pdf クリックするとPDFが開きます。

セミナー概要

【講演者紹介】

 梅津千恵子氏(京都大学大学院農学研究科教授)は、ハワイ大学で博士号を取得後、イースト・ウエストセンター客員研究員を経て、神戸大学大学院自然科学研究科の専任助手に着任されました。その後、総合地球環境学研究所准教授(2002-2012年)、長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科教授(2012-2016年)を経て、現在は京都大学大学院農学研究科教授をなされています。その間、国際的に著名なジャーナルに数多くの論文が掲載されています。この度は、農業経済学の第一人者である梅津氏による「ザンビアにおける食料と栄養の安全保障のためのレジリアンス構築」と題した研究発表を拝聴する機会を頂くこととなりました。

【講演内容】

 アフリカ内陸国に位置するザンビアの基幹産業は農業であり、現在の主な農産物はトウモロコシになります。ですが、トウモロコシ栽培は天水農業によってなされているため、旱魃や多雨といった極端な気象現象にその生産量が大きく左右されるというリスクを抱えています。ザンビアでは多くの国際的なNGO団体が活動しているため、そのようなリスクに直面しても生命の危機に直結するほど事態は困窮しているわけではありませんが、それでも多くの農家にとって旱魃や多雨は世帯所得の激減や健康被害などの多くの問題をもたらすものに違いはありません。今回発表頂いた研究内容は、そのような予期せぬリスクに直面した場合に、速やかに人々やコミュニティが元の状態に戻るためには、どのような制度や社会システムを構築することが効果的であるかを検証することを目的とした研究プロジェクトの一環にあたるものです。

 分析結果は以下のように要約できます。第一に、農家は雨量変動による収穫量の減少だけではなく、それに伴う食料価格高騰による栄養摂取機会の減少などのリスクにも晒されている。第二に、リスクに直面した農家は牛などの家畜資産の売却や私的贈与・公的援助などを通して、およそ一年以上の時間をかけて元の生活水準に戻る傾向にある。第三に、気象リスクに対して農家が取りうる事前対策としては農地の地理的分散、事後対策としては作付転換、再播種、森から野生食物を採取などがある。ただし、それら対策のうちどれが実施可能かはその人が置かれた社会的・自然的環境に左右される。以上の知見を踏まえると、地域のレジリアンスを高めるための具体的な方策として、①リスクに直面したときの転換作物の確保や野生食物を供給する自然資本の保全、②マーケットアクセスを容易にするインフラ整備や地域の作物供給と食料価格の安定施策、③リスクを緩和するための栽培品種の多様化や天候保険等の制度的支援、そして④教育や医療などの基本的サービスの充実などの長期的戦略を提案しています。

 梅津先生が携わられている研究プロジェクトは、食料安全保障は農地の分散化や多様な品種の開発・導入による食料生産だけではなく、市場を通じた価格政策や栄養状態の改善策、そして地域の実情に即した保険制度の構築といった包括的な取り組みを通じて実現しうるものであることを様々な視点から検証するものですが、災害大国の日本に住む私たちがここから得る教訓はとても有意義なものといえるでしょう。

文責:経済学部社会システム学科 准教授 松下京平

講演会の様子
講演会の様子






問合せ先:滋賀大学経済学部リスク研究センター
担当:山﨑(やまさき)(内線395)
TEL:0749-27-1404  FAX:0749-27-1189
E-mail:risk@biwako.shiga-u.ac.jpまでお願いします。