近江商人とは
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近江商人とは、近世を代表する商人で、
(1)創業期には行商形態をとり、
(2)商圏の拡大とともに全国各地に出店を設け、
(3)薄利多売の方針のもと、営業の種類が多岐
にわたり、
(4)共同企業形態や会計帳簿などに見られる
ように合理的経営を行ったが、それは、
(5)勤勉・倹約・正直・堅実の経営者精神に支え
られていた。
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近江商人の商業活動は全国に及ぶが、特に
当初の中心地域は、北関東・東北・北陸・
山陰地方などで、当時は経済的に後進地域
であった。しかも、不況期に進出したため、
低価格で販売せざるを得なかった。
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したがって、薄利の分だけ商品の回転を高め、
取引量を拡大する必要があり、その結果とし
して、現代の企業活動の源とされる市場調査
(マーケティング)や商業リスクを分散するため
の資本結合(共同企業)が行われた。
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近江商人の精神を表す言葉として「三方よし」
(売り手よし、買い手よし、世間よし)が語ら
れるが、この用語自体は近江商人の家訓・店則
などの史料には見あたらない。近年になって言
い出されたものであるが、近江商人の「勤勉、
正直、堅実」の態度や「陰徳善事」の実践を簡
潔な言葉で表されたことから、CSR(Corporate
Social Responsibility 企業の社会的責任)の広が
りの中で拡大解釈され流布していると考えら
れる。
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代表的な近江商人である中井源左衛門家の
家訓を紹介する。
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出典:『士魂商才館』2009年2月刊行