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企業における組織行動および環境経営における日本・マレーシアの比較

企業経営学科 教授 弘中 史子
 これまでの共同研究において,Rusinah准教授と申請者は,日本とマレーシアの組織行動,環境経営に対する考え方に差異があると考え,その違いを分析してきた。しかしながら共同研究者であるRusinah准教授が,これまで日本における企業調査の経験がなかったことから,議論を深める上で認識のギャップがあった。
 今回,Rusinah准教授を招聘することができ,申請者と共に日本の企業を視察することで,その認識ギャップを埋めることができ,議論を一層深めることができた。
 たとえば,環境経営という視点からとらえるならば,日本企業のそれは他の経営戦略と独立して行われているのではなく,組織の構造・プロセスとうまく調和する中で実践されていることが,視察におけるインタビューからも明らかになった。
 マレーシアでは豊かな自然を保全するという社会的な要請から企業が環境経営に取り組むようになっているが,それらが企業における組織構造やプロセスと融合できていないという課題がある。このことがリーダーや働く社員の意識を高める上での妨げとなっており,結果として企業のグリーンな組織行動のタイプが限定される結果になっていると考えられる。
 一方で,グローバル化ということに注目するのであれば,マレーシアの企業は日本企業よりも進展している部分が多い。日本企業特有の組織の構造・プロセスが,グローバル化に対応する上で障害になっている面があることが窺える。この点についても,今回の招聘による視察とディスカッションを通じて,明らかにすることができた。
 今後企業が環境経営とグローバル化の双方を同時追求しなければならないと考えるならば,日本企業の手法をそのままマレーシアに取り入れることは有効ではないであろう。また申請者のマレーシアにおける研究においても,日本企業が他の東南アジア諸国で実施している手法を安易にマレーシアに導入することにも限界があることが示唆されている。
 協議の結果,日本とマレーシアの組織行動の差異を,組織のミクロレベルから分析を進めることが効果的であると考えるにいたった。具体的には,人事システム,人材育成,動機付けのありかた,社内のコミュニケーションいった点について,日本人とマレーシア人の考え方を明らかにしていくのである。さらにこれにリーダーシップの側面を追加することで,両国における組織行動の差異が解明しやすくなり,ベストなモデルを考える上で,大いに参考になるであろう。
 可能な限り精緻化して比較するために,当面は同一企業に勤務する日本人とマレーシア人を対象に比較調査を進めることとした。今回のRusinah准教授の招聘中に,適切な調査対象企業,調査内容の項目などについても具体的に検討することができ,今後さらに共同研究を進展させる上で貴重な機会となった。
 また今回の招聘は,Rusinah准教授のゲスト講義やセミナーを実施したり,本学教員とのネットワーク構築にもつとめたりしたことから,交流協定校との今後の研究交流促進という意味でも一定の効果が得られたと考えている。

【研究成果発表の時期と方法】
・リスク研究センター「アジア経済セミナー第3回 マレーシア経済とビジネス」2015年12月18日(金)
・上記の他に,2016年にこれまでの研究の成果をディスカッション・ペーパーとしてまとめるほか,日本国内や海外の学会でも発信していく予定である。

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