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空間的視座による金融政策効果に関する一考察

経済学科 准教授 得田 雅章
 地価関数のパネルデータ推計のためのデータセットを構築した。空間データの集約単位(全国市区レベル)毎に集計地価データを集約整備(High to low frequency conversion)した。そのうち地価データについては、変動期において低価格地域の変動インパクトによる過大評価が修正できるとされる加重平均地価を用いた。一方で銀行貸出総量、金利、総生産といった集計マクロデータを市区レベルにまで細分化させた(Low to high frequency conversion)。市区レベルの800に及ぶセミマクロのパネルデータセットを効率的に構築するために、GISを活用した地理空間情報の高度活用法を積極的に取り入れた。
 注力したのは、「平成の大合併」の取り扱いである。これらは既存の単位自治体の過半を巻き込み、対等合併、吸収合併、新設等で、新たに合併自治体となってきた。
 平成の大合併を実施した意義は財政面や行政サービスの点で極めて大きいが、その効果を全国レベルで実証分析するとなると、相当の困難に直面する。例えば、年毎の自治体人口は住民基本台帳によりクロスセクションデータとして確認できるが、各自治体の時系列データとなると以下のような不都合が生じる。
 ・同じ市名でも、吸収合併した前後でジャンプが生じる
 ・新設の場合は、数年分のデータしか入手できない
 バランスのとれたパネルデータを構築するとすれば、平成の大合併に全く関係がなかった自治体のみを選択せねばならないが、そうすると情報の欠損が大きくなりすぎる(全自治体の46%しか利用できない)。
 そこでパネル推計に先立ち、2015年時点の795の単位自治体(主に市と特別区)をベースとして、各自治体の2003年までの遡求データを作成し、そこから導かれる結果を整理した。遡求データ作成では、述べ1300強の自治体について再集計をするという根気強い作業を必要としたが、その成果として、ほぼ全国自治体をカバーできた。これにより単一エリアレベル、あるいは都道府県レベルにとどまっていた地価関数の分析が、より広い全国を対象とした分析に拡張することができた。こうしたデータセットの構築により、従来の分析に比し、より精度の高い推計結果が得られた。
 なお、パネル分析の前段階としての時系列分析に係る研究成果は、本学二宮健史郎教授との共同報告として学会発表を行った。

 ・“Structural Change and Financial Instability in the US Economy”、2015年11月22日、経済理論学会(於:一橋大学)

 海外ジャーナルへの投稿についてはリジェクトとなったため、内容を修正のうえ再提出を模索している。
 一方で、研究成果を活かした次年度の外部研究助成の獲得には成功した。

 ・全国銀行学術研究振興財団研究助成(単独)、「テーマ:金融政策効果の地域格差に関する実証分析」、期間:2016年2月~2017年3月



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