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医療経済研究会の運営-社会的共通資本としての地域医療ネットワークに関する学際的研究-

     ファイナンス学科       助教授 井 手 一 郎


 本プロジェクトは、滋賀大学と滋賀医科大学の教員有志によって進められている医療経済研究会の研究活動の一環として進められているものである。本プロジェクトでは、「社会的共通資本としての地域医療ネットワークに関する学際的研究」をテーマに共同研究を実施した。
【平成17年度 重点研究事業の概要】
平成17年度助成資金を活用し、医療経済研究会では、二つの重点研究事業を実施した。第一の事業は、医療経済研究会とJA長野厚生連佐久総合病院(長野県佐久市)と共同地域医療ネットワークの形成と地域における医療保障に関わる共同研究を進めるための研究打ち合わせ、資料交換等を行った。社会保障制度改革の進展の中で、医療の現場が直面している課題を「現場の声」として、実態調査を行った。この事業は、医学研究者・医療従事者と滋賀大学経済学部の社会科学研究者の共同研究のネットワークづくりと研究の共通基盤づくりの準備を行うもので極めてユニークな取り組みである。
第二の事業は、市町村が保険者である「国民健康保険事業」の財政調査である。この調査には二つのねらいがあった。第一のねらいは、三位一体の地方財政改革の中で、国民健康保険の国庫負担の一部が都道府県に税源移譲された事態を受け、三位一体の地方財政改革が市町村国保財政に与えた影響の実態調査を行い、三位一体の地方財政改革への評価を行うことである。第二のねらいは、佐久総合病院が地域の保健活動を行っている地域の医療費の動向調査を行い、保健・予防活動が、地域住民の健康状態の改善と医療費の低下に効果があったのかを検証する試みの一つである。
 こうした研究活動は、近年の社会保障制度改革や三位一体の地方財政改革など政府の展開する改革が、地域の医療保障システムに与える影響を検証するものであり、国民の医療を受ける権利を実質的に確保するための制度の在り方を考える上で重要な研究である。
【研究成果】
 佐久総合病院がこれまで実施してきた保健・予防活動は、地域に根ざした優れた活動として高く評価されてきた。本調査プロジェクトでは、佐久穂町(佐久町と八千穂村が合併)の保健活動と国保財政をセットとした調査を実施し、保健活動が医療費に与えた影響を検証した。「保健・予防活動が、地域住民の健康状態の改善に効果があり、その結果として、住民の健康が保たれ、医療費の水準が低いのではないか」という仮説を検証するためのものである。
 現段階での調査では、二つのことが明らかとなった。第一に、旧八千穂村における保健予防活動は、佐久総合病院と緊密な協力関係の中で進められ、住民の組織化、住民の保健学習の活発さとその水準の高さには特筆すべきものがある。地域住民の「保健や予防に関する知識」の普及状況に大きな影響を与えているものと推測される。第二に、旧八千穂村の国民健康保険財政は、良好であり、財政から見ると医療費が安価であると推測される。今後、詳細な検討が必要ではあるが、保健活動の活発な地域において、医療費水準が低下する可能性を指摘することが出来る。今後の調査課題として、この旧八千穂村の取り組みが、旧佐久町地域に普及していく過程で、旧佐久町地域の住民の健康状態の改善、医療費の低下傾向が見られるのかどうかが調査課題として残っている。また、地域医療ネットワークの形成と地域医療資源の配置状況の在り方とそれらの形成に公共政策がどの様に関わることが可能なのか、関わるべきなのかといった課題もなお残された重要な課題である。
 
結果発表
 結果発表の時期:
2006年7月        2007年5月 
 結果発表の方法:
医療経済研究会報告      地方財政学会報告

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