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ユングにおける「共時性(Synchronism,Synchronismus)」の概念研究

     社会システム学科        教授 山下 一道


 ユング全集第8巻の「非因果的連関の原理としての共時性(Synchronizitaet als Prinzip akausaler Zusammenhaenge 1952)」の著作から、ユングの「共時性」概念が以下のように理解された。
(1) ユングは、共時性の概念を近代物理学による数々の発見の結果自然法則の絶対的妥当性が打ち砕かれて相対化され、それと同時に自然法則の哲学的原理としての「因果性」も統計学的にのみ妥当することが明らかになることによって、「偶然性」の領域とこの非因果的事象を説明する原理として「共時性」の原理の存在を主張した。
(2) この「共時性」とは、一種の同時性、すなわち、「時間と空間に関して心的に条件づけられた相対性(時間的にも空間的にも因果的にどちらかが原因で、他方が結果という関係として捉えられず、また、客観的なものとしてではなく、我々がこのような因果性では理解出来ない現象を説明する原理)」として、「意味のある偶然の一致」とよばれる。
(3) 「共時性」は、意味深くはあるが因果的にはつながっていない二つの事象が同時に生起するということを本質的な規準とするので、単に二つの事象が同時に生起することを意味するに過ぎない「並時性(Synchronismus)」とは対照的に、ある同一あるいは同様の意味を持っている二つあるいはそれ以上の因果的には関係のない事象の、時間における偶然の一致という特別な意味をもつ。従って、「共時性」とは、ある一定の心の状態が、そのときの主体の状態に深く対応するように見える一つあるいはそれ以上の外的事象と同時的に生起することを意味している。
(4) 共時性は、「空間、時間、因果性」というすでに承認されている(必要ではあるが、絶対的でない)三要因に第四番目として付け加えられるべき知的に必要な原理を仮定する経験的概念である。すなわち、純粋に偶然的なものとは見なされなくなり、因果的な説明の欠如のために意味のある配列として考えねばならなくなった「原因が知的な言葉では考えることすら出来ない出来事」の説明原理である。
(5) 「共時性」は次の三つの型として生起する。
a.客観的過程と対応した、ある心的内容の偶然の一致のことで、それは同時に生じるように知覚 されるもの。
b.幻像(夢とか幻)を伴った主観的心理状態の偶然の一致のことで、それは遠く離れているが、 多かれ少なかれ同時に生じた客観的事象、多かれ少なかれ「共時的」なものの信頼出来る反射 であることがあとで分かるもの。
c.bと同じ、但し、知覚された事象が未来に生じるが、その事象と対応することが、現在におい て幻像によってのみ、表現される場合を除いたもの。
 
結果発表
 結果発表の時期:
平成19年3月
 結果発表の方法:  彦根論叢に投稿予定。
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