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マネジメント・コントロール・システム(MCS)の新しい潮流

会計情報学科  教授 頼 誠

 本研究では、広い意味での分社制におけるマネジメント・コントロールの特徴を明らかにし、その問題点の解明と解決案の提案を意図していた。具体的研究テーマの一つとして、M&A以降の、持ち株会社制をとっている企業集団において、マネジメント・コントロール・システム(MCS)にはどのような問題点と特徴があるかというテーマに取り組んだ。文献を渉猟し、企業のホームページにアクセスして資料収集し、M&Aを行い持株会社を設立している企業、数社へ他大学の研究者と共にヒアリングに行く機会を得た。 さて、当初の具体的研究課題の一部は、以下のような諸点であった。
(1)多角化した中でどうやってシナジーを生み出すのか。(2)シナジーを生み出す仕組みとして、本社の機能・手段は何か。(3)MCSは、これにどう関連しているのか。(4)従業員・経営者のモチベーションをあげる、維持するのに管理会計が果たしている役割は何か等の課題に取り組むにあたり、M&Aの目的、持株会社のねらいについて、いくつかの仮説を得た。
 M&Aの件数が増加している理由は、以下のような目的のためであると考えられる。(1)救済的意味合い。(2)短期的に成長するため。(3)事業分離により事業の価値をストレートに株価に反映させるため。(4)自社にない資源を素早く手にいれるため。(5)事業を切り離し、キャッシュを得て成長が見込める事業に資金を集中するため。
 持ち株会社を設立する理由としては、(1)戦略マネジメントと事業マネジメントの分割。それによって、(2)環境変化に迅速に対応できるようにする。(3)事業毎の業績を明確にして事業縮小の根拠を提示する。(4)敵対的買収に対する防衛等である。
 また、問題点としては、以下のような指摘があった。
(1)持ち株会社が事業会社をうまくコントロールできない場合、組織が崩壊する恐れがある。(2)企業価値、事業価値の評価が困難である。どういう尺度を用いてどのように評価するか。(3)事業会社間に壁ができ、事業間の協力がカンパニー制よりも困難になる。(4)合併に伴うコンフリクト。(5)買収される側の優秀な人材の離職、残った社員の低いモチベーション。(6)シナジー効果がうまく発生しない。その原因は、人員の再配置・リストラに伴うコスト、これまで存在していたシナジーの消滅、もたれあい、などいくつかの理由が指摘される。
 以上のような諸問題に対する解決法および具体的なM&Aや分社のプロセスや戦略の実行、シナジー効果が発生する条件、MCSの仕組み等を、多面的に、いくつかの企業のケースを通じて明らかにしようと試みているところである。さらにヒアリングを重ね、企業側の許可を得た上で、結果を公表させていただきたいと考えている。なお、本研究資金のおかげで、企業へヒアリングに行くことができ、本研究で当初計画していた課題以外にも企業の実態を知ることができ、大いに勉強させていただいた。この場を借りて、陵水会に御礼申し上げたい。 
結果発表
 結果発表の時期: 2、3年以内。研究内容がまだパイロット調査的段階であり、他大学の研究者と共同で研究していること、および、企業のヒアリングの内容については、企業側の許可が必要なためすぐには活字の状態にすることはできない。   結果発表の方法: 専門雑誌への投稿、および、共著で著書としてまとめたい
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